(ブルームバーグ):米ニューヨーク市ではマラソンシーズンたけなわだ。ランナーはマンハッタンのセントラルパークから、ブルックリンやブロンクスへの道のりを華やかなランニングウエアで駆け抜ける。
ランニング愛好家らは、ただ走っているだけではない。ニューヨーク市の労働所得や税収、ビジネス活動を押し上げることで、経済効果も生み出している。
ニューヨークシティマラソンなどを主催するニューヨーク・ロードランナーズ(NYRR)によれば、同市のランニングブームによる経済効果は3月までの会計年度で推計9億3400万ドル(約1380億円)に達した。5年前の同期間と比べて58%増加し、消費者物価の上昇率を大きく上回った。
「過去5年ほどの間に起きたこと、特に新型コロナ禍以降の変化は、人々がランニングを単なる運動ではなく、癒やしの手段として取り入れるようになったという点だ」とNYRRのロブ・シメルカイアー最高経営責任者(CEO)は指摘する。「今やこの街の社会的つながりの重要な一部になっている」と述べた。
昨年のニューヨークシティマラソンだけでも経済効果は6億9200万ドルと、2019年の2倍を超えた。この経済効果は主に市外からの来訪者に支えられ、宿泊や飲食に2億8700万ドル、交通費に1900万ドルが支出された。今年の同マラソンは11月2日に開催される予定だ。
企業もこうした動きを商機と捉え、ランナー向けアクセサリーやトレーニングアプリ、複数のランナーで走る「グループラン」の機会などを次々に提供している。ニューヨークのランナーの間では、イベントで特定の色のウエアを着用すると「独身で交際希望」だという暗黙のサインまで存在する。スニーカーは飛ぶように売れている。
ランニングは「多くの人々の社会生活の中心となっている。特に若い世代は増え続けるランニングクラブに参加し、人々と出会っている」とシメルカイアー氏。「友人だけでなく、恋人ともランニングを通じて出会っている」と続けた。
NYRRでは2024年4月から25年3月までに34のレースを主催し、29万1000人超の参加者を集めた。市外からのランナーや観客は100万人余りに上った。
トレーニングプログラムも急増している。NYRRはコロナ禍後に登場したコーチングアプリ「Runna」と提携し、現在市内5カ所の公園で対面のトレーニングセッションを開催。4000人余りが参加している。さらに6000人がオンラインで利用しており、前年から94%増えた。
「ランニングを始めるハードルは非常に低い。必要なのはランニングシューズ1足だけだ」とシメルカイアー氏は語った。
原題:NYC’s Running Boom Is Adding Almost $1 Billion to Local Economy(抜粋)
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