自衛官の深刻な“人手不足”の実態

2023年度の自衛官採用は19598人の計画に対し、実際に採用されたのはわずか9959人。割合は51パーセントと、過去最低の数値となった。(※2024年度は9724人と人数は減少したが採用計画数の見直しが行われたため割合は上昇している)
問題は採用数だけではない。自衛官がどのくらいの人数が必要という数字に対し、実際の自衛官の割合を示す「充足率」は2024年度には9割を切った。(2023年度の充足率は91パーセント。2024年度は89パーセント。)
こうした状況を受けて、政府が力を入れているのは「処遇改善」と「採用活動」だ。
自衛官の処遇改善をめぐっては、石破総理が去年の自民党総裁選から訴えている肝いりの政策。石破内閣が発足した直後には関係閣僚会議が立ち上がった。
自衛隊の人手不足の背景には、自衛官を取り巻く環境が他の業種と比較しても厳しい実態がある。
防衛省によると、生活のための営舎などの施設の4割が1982年以前の旧耐震基準にあたるという。戦前にできた施設もあるという。
また、警察官や消防士と違って自衛官には転勤がつきもの。全国各地へ転勤する可能性があり、平均すると2~3年に1回は転勤が行われる。
筆者が取材を始めてからも、あちこちで聞こえた声もある。
防衛省・幹部
「やっぱりわかりやすいのは金」
陸上自衛隊・幹部
「(人気が出ないのは)任務の緊張感や責任感に比べて、初任給の“少ない感”じゃないですか」
自衛隊・幹部
「入隊した時の給料を増やすとか手当を500円増やすとかじゃ限界だ。抜本的に給料体系を変えなければいけない」
現在、政府は自衛官に対する手当などを拡充することで、手取りを増やす取り組みを始めている。しかし、自衛官の俸給表(階級などに対し給与を決めるもの)は、1950年に自衛隊の前身である警察予備隊発足時から適用されていて、本格的な改定はこれまで行われていない。
今後、この俸給表の見直しが行われることになるが、実際に見直しされるのは3年後の2028年だ。将来的な人員確保につながる可能性があるとはいえ、この数年間で自衛官を目指す若者や現役の自衛官にとっては不満が残る。