「躊躇する潜在投資家」への戦略、心理的ハードルに寄り添ったサポートを

本稿で「躊躇する潜在投資家」と表現したNISA意向者ついては、ここまでの分析から以下のことがわかった。

・女性/若年現役層(20~40代)/中間収入層(300~700万円)に多く、NISA利用者やNISA未認知者等とは属性的特徴が異なる。

・リスクへの許容度は低く、資産運用時の意思決定では慎重かつ他者依存的な姿勢を持つ。

・「投資の方法がよくわからない」を理由に躊躇しているが、金融リテラシーが低いわけではなく、自身の金融知識に対する自己評価が低い。その背景には、知識の吸収に対する前向きな意識と後ろ向きな行動の矛盾感があると考えられる。

・保険商品へのニーズと信頼感が高く、加入率も比較的高いことが、躊躇を助長している可能性がある。

NISAを取り扱う金融機関からすれば、この「躊躇する潜在投資家」は、資産運用への関心や情報ニーズの高さをみても、将来的な顧客化が十分に期待できる層といえる。

そして顧客化を実現するためには、分析から明らかになった決定力・行動力の乏しさや金融資産の保有傾向を踏まえ、適切なサポートと心理的なハードルに寄り添ったアプロ―チが重要と考えられる。具体的には、正しい顧客像の想定、そして「安心感」「わかりやすさ」「自分ごと化」を重視したコミュニケーション設計を行うことが効果的な施策となると考えられる。

「躊躇する潜在投資家」への理解を深め、そして戦略的な語り掛けを行うことが、金融機関の顧客との信頼関係の構築、ひいては個人による資産形成の推進につながると期待される。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員 西久保瑛浩)