2024年1月に「新NISA」が施行され、1年以上が経過した。
日本証券業協会が実施している「証券投資に関する全国調査」によれば、NISA利用者の割合は直近2024年度調査で14.4%(2021年度:7.5%)と大きく増加している。
まさしく新NISAの施行やその基盤となる資産形成ブームによる影響と考えられ、
「貯蓄から投資へ」の進展が窺える。
一方、NISA利用者の1.1倍にあたる16.0%が「聞いたことあり、興味がある(が未開設)」で留まっており、まだまだ利用者拡大の伸びしろがあるともいえる。
今後の政策としての資産形成の推進や、証券会社をはじめとする金融機関の新規顧客獲得に向けて、「聞いたことあり、興味がある」の層に対する理解を深めることは、引き続き重要な意味を持つ。
そこで本稿では、このいわば「躊躇する潜在投資家」の解像度を、データを用いて高めていきたい。
NISA利用者は大きく増加、伸びしろも
2024年1月に拡充型の少額投資非課税制度(いわゆる「新NISA」)が施行され、1年以上が経過した。
日本証券業協会が実施している「証券投資に関する全国調査」によれば、NISA利用者(「口座を開設、投資あり」)の割合は直近2024年度調査で14.4%(2021年度:7.5%)と大きく増加している。
NISA口座の未開設者をみても、「聞いたことあり、興味がある」が16.0%(2021年度:9.9%)と大きく増加、逆に「知らない」は21.8%(2021年度:42.0%)と大きく減少しており、認知・興味・利用ともに飛躍的な向上を達成したといえる。
まさしく新NISAの施行やその基盤となる資産形成ブームによる影響と考えられ、「貯蓄から投資へ」の進展が窺える。
一方、見方を変えれば、NISA利用者の1.1倍が「聞いたことあり、興味がある」で留まっており、まだまだ利用者拡大の伸びしろがあるともいえる。
今後の政策としての資産形成の推進や、証券会社をはじめとする金融機関の新規顧客獲得に向けて、「聞いたことあり、興味がある」の層に対する理解を深めることは、引き続き重要な意味を持つ。
そこで本稿では、このいわば「躊躇する潜在投資家」の解像度を、データを用いて高めていきたい。
属性から見る「躊躇する潜在投資家」
まず、先に示したNISAの利用状況について、「聞いたことあり、興味がある」の回答者(以下「NISA意向者」)に焦点を当てて属性別にみていく。
男女別にみると、NISA意向者は女性(17.1%)で高い。
「知らない」は同様に女性で高いものの、NISA利用者~「内容理解済、開設意向なし」はそれぞれ男性で高くなっており、NISA認知者の中でNISA意向者は特徴的に女性への偏りがみられる。
年代別にみると、NISA意向者は40代以下の層で特に高く、60代以上の層で低い。他の項目と比較しても、NISA意向者は若年現役層に偏る単調な傾向がみられる。
また、「知らない」が20代以下で、NISA利用者が40~60代でそれぞれ高いことを踏まえると、平均的に20代までに認知へ、40~50代で利用へとステージを移行する様子がわかる。
つまり、一定のNISA意向者は加齢に伴いNISA利用者へ移行することが期待できるわけだが、資産形成の開始時期として20~40代という期間を逸している現状はあまり好ましくないように思える。
次に個人年収別にみると、300~700万円未満の層で高く、低収入層・高収入層では低くなっている。「聞いたことあり、興味はない」が100万円未満および200~300万円未満で高いことを踏まえると、年収300万円が興味の有無の境目となっていることがわかる。