米モーニングスターの創業者ジョー・マンスエト会長によれば、人工知能(AI)に基づく金融モデルが市場調査会社と肩を並べるのはまだかなり先だ。

マンスエト氏はシカゴ大学が先週開催した会議で自身が助言しているスタートアップ、バルスAI(Vals AI)が実施した調査を紹介。20を超えるAIモデルによる財務分析の正確性を検証したこの調査で示された結果は合格点には程遠いものだったという。

投資リサーチや資産運用サービスの提供で資産を築いた同氏は「500の質問を用意したが、20のどのモデルも正答率は50%を超えなかった」と説明し、AIの性能は今後向上していくものの、金融分野におけるAIの現時点での能力は「過大評価されており、実用化にはまだ長い道のりがある」と述べた。

バルスAIはリポートで、「現在のAIモデルは、新人アナリストに求められるような自由回答形式の問いに対応できる性能ではない」と分析している。

AI推進派は、金融モデルの作成やデータ入力、取引文書のとりまとめといった主に若手バンカーが担当している煩雑な業務をAIが効率化すると主張。

一方、AIに依存することで、若手がキャリアに必要なスキルを十分に習得できなくなるのではないかという懸念もある。それでも、モルガン・スタンレーやシティグループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)といった大手銀行は行内向けAIテクノロジーの開発を進めている。

マンスエト氏は、性能向上を続けるAIモデルの台頭でアナリストは「より速く走り続ける」必要性が生じていると指摘しながらも、人間のアナリストが持つ定性的な判断力は今後も重要であり続けると語った。

同氏は1984年、自宅でモーニングスターを始めた。モーニングスター・ウェルスの運用資産は2024年末時点で約3380億ドル(約48兆円)。ブルームバーグ・ビリオネア指数は、マンスエト氏の純資産を63億ドルと評価している。

同氏によると、シカゴを本社とするモーニングスターは顧客との契約期間が一般的に3年であるため、トランプ政権の関税政策が引き起こす市場の不安定さに対しある程度守られている。顧客の運用資産に「影響が出ることは確か」だが、それでも克服できるとの認識を示した。

「市場が不安定になると、顧客はいったん立ち止まり、様子見するようになる」と説明。「これは政策によって引き起こされたボラティリティーだ。乗り越えられると思っている」とマンスエト氏は話した。

原題:Morningstar Billionaire Says AI Finance Models Lag in Accuracy(抜粋)

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