このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明さに揺さぶられている。米トランプ政権は、貿易赤字の縮小と空洞化が進んだ国内製造業の再興を目的に、自動車、鉄鋼製品、アルミ製品の輸入に対して一律で25%の追加関税を課した。さらに、すべての国に一律で 10%を課した上で、一部の国を対象に非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。今月初めには一律部分に加え、上乗せ部分も一旦発動されたが、直後に中国以外に対する上乗せ分を90日間延期するなど、政策は二転三転している。こうした米トランプ政権の関税政策を巡る朝令暮改ぶりは、世界経済や企業活動への全体的な影響をみえにくくしている。

トランプ関税に対して中国が対抗措置に動いたことを受けて、米中は関税の報復合戦の様相を呈した結果、米国は中国からのすべての輸入品に 145%、中国も米国からのすべての輸入品に 125%という異例の高関税を課す事態となっている。米国が中国に強硬姿勢をみせる背景には、中国からの輸入拡大が近年の米国の貿易赤字拡大を招いていることがある。さらに、ここ数年の米中摩擦の激化によるサプライチェーンの見直しを追い風に、アジア新興国を経由した中国による『迂回輸出』の動きが活発化し、米国の国別の貿易赤字国の上位にアジア新興国が名を連ねている。よって、米トランプ政権は相互関税を巡って、アジア新興国に軒並み高い税率を設定するなど『圧力』を強めている。