関税はとにかく「対米投資」狙い

トランプ関税の狙いには、対米投資の拡大がある。日本も1兆ドルの直接投資残高を目標にすることを約束した。おそらく、各国の首脳や経営者にも、多かれ少なかれこうした約束を、関税引き上げを思い止まる見返りにさせようということだろう。

その効果は、米国の需要拡大に貢献し、国内投資・雇用を増加させる。その点で景気拡大+インフレ圧力になる。また、投資拡大はドル需要を拡大させる点で、ドル高を促すことにもなる。つまり、マーケットに対する影響は、少し長いスパンでの長期金利上昇+ドル高・円安の効果である。

トランプ取引によって、予想されていた関税率の引き上げが見送られると、その効果はインフレ圧力を弱めることにはなるが、その代わりに約束された対米投資が実行されると、米景気が改善してドルが買われる展開が予想される。いずれにしても、今後のドル高・円安基調は継続するという見通しになる。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生)