アメリカのトランプ大統領が、ついに、高い関税を課している国などに同様の関税を課すという「相互関税」を導入すると発表しました。今後、数週間から数か月かけて、商務省など各省庁が各国ごとに調査をして、具体的な発動内容を決める段取りです。もちろん日本も調査対象です。

世界を相手に「釣り合った」結果を

トランプ大統領は13日、「相互関税」導入を関係省庁に指示する覚書(メモランダム)に署名しました。日本語で「相互」と聞くと、まるで正当な主張のようですが、英語は“reciprocal tariffs”です。この“reciprocal”と言う言葉は、かつての日米貿易摩擦や、第1次トランプ政権の貿易交渉でも使われた、いわば『要注意』ワードです。単に「相互の」と言うだけでなく、「釣り合った」状態、一対一の「対の関係」を意味しており、それぞれの品目や国について、結果が同じであることを求めるニュアンスの言葉です。

ニュアンスが伝わりにくいからか、ニューヨークタイムズ紙は見出しに「トランプ氏、新たなグローバル関税を命ず」という表現を用いました。世界中を相手に関税上乗せを目論むと言う意味では、この表現の方がわかりやすいかもしれません。トランプ氏は選挙期間中にすべての国に10~15%の追加関税をかけると述べていました。さすがに、こうした「一律関税」には政権内でも反対論があって、国ごとに調査・発動という形にはなったのでしょう。しかし、トランプ氏の頭の中では、「貿易赤字削減のためすべての国に一律関税」という延長線上に、位置付けられていると見られます。

非関税障壁も調査・発動の対象に

「相互関税」の対象は関税だけではありません。規格や安全基準といった規制などの非関税障壁も、調査対象になっています。ホワイトハウス高官は、日本を名指しして「関税率は低いが、構造的な非関税障壁は高い」と問題視していることを明らかにしました。

また、付加価値税などの内国税制も調査対象になるようで、とりわけEUの20%を超える高い付加価値税を狙い撃ちする構えです。EU域内で売られる米国車の輸入には高い付加価値税がかかるのに、アメリカで売られるドイツ車の輸出の際にEUの付加価値税が免除されているのは、輸出補助金と同じで、「釣り合っていない」と言う理屈なのです。

さらに、為替操作の有無についても調査対象になっています。為替レートが市場実勢から著しく乖離しているのなら、その分、関税を上乗せするという理屈です。

「相互関税」の具体的内容は不明

しかし、現時点で「相互関税」がどのようなものになるのかは、全く不明です。

例えば、自動車関税の場合、EUの関税が10%で、アメリカの関税は現行2.5%です。アメリカがEUからの輸入車の関税を、EUと同じ10%にまで引き上げるというように、それぞれの品目について同じ関税にするという考え方もあります。

或いは、自動車関税が日本はゼロ、アメリカは2.5%と日本の方が低いけれど、日本の場合、農産物の関税が高くて釣り合っていないので、日本からの自動車関税を2.5%からさらに高くする、というように、他の製品に上乗せして調整を行うという考え方もあるでしょう。いずれにするのか、わかっていません。

まして、非関税障壁や為替操作を、関税上乗せ分として計算するとなると、想像するのも至難の業です。