日本銀行は24日の金融政策決定会合で、昨年7月以来の追加利上げを決めた。政策金利は0.5%程度と17年ぶりの高水準となる。植田和男総裁は、今後の利上げについては予断を持たずに毎回の会合で判断していく考えを表明した。

政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%程度から引き上げた。0.5%は2007年2月-08年10月以来。27日から適用する。8対1の賛成多数で決定し、中村豊明審議委員が反対した。昨年3月にマイナス金利解除などで大規模緩和から脱却した日銀は、1年足らずで3回利上げしたことになる。

日銀の植田和男総裁

声明文では、利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的環境は維持されると指摘。今後の政策運営は経済・物価・金融情勢次第としながらも、実質金利が極めて低水準にあることを踏まえ、新たに示した経済・物価見通しが実現すれば、利上げで緩和度合いを調整していく方針を維持した。

植田総裁は会合後の記者会見で、今後の緩和度合いの調整のペースやタイミングは「経済・物価・金融情勢次第で予断は持っていない」とし、毎回会合で各種データ・情報などを基に適切に政策判断していくと語った。従来の利上げの効果を確かめつつ「段階的に動いていくのが適切な対応」と指摘。緩和的でも引き締め的でもない名目中立金利は日銀の分析では1-2.5%に分布しているとし、0.5%への利上げ後も「まだ相応の距離がある」との認識も示した。

今回の利上げ後も政策金利はスイスと並び世界最低が続く。消費者物価の上昇率は3年近く日銀目標の2%以上で推移しており、昨年12月には1年4カ月ぶりの3%台に拡大した。日銀が重視する賃金と物価の好循環も強まる中、市場の関心は次の利上げの時期とペースに移っている。植田総裁は利上げ継続への期待を示しながらも具体的な言質は与えなかった。

 

会合結果と総裁会見を受けて、円相場は一時1ドル=154円台後半まで上昇した。

声明文では、日本の経済・物価は日銀の見通しにおおむね沿って推移しているとした上で、先行き見通しが実現していく確度は高まってきていると指摘。2%の物価安定目標の持続的・安定的実現の観点から、緩和度合いの調整が適切と判断したと説明した。基調的な物価上昇率は2%に向けて徐々に高まってきているとしている。

SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、会合結果にサプライズはなかったと指摘。日銀の言う通り、「景気のオントラック(想定通り)で賃上げも続くと考えられるので、利上げを決めた」と語った。その上で、今後は「半年刻みで1%程度まで上げていく。7-9月と来年1-3月」との見方を示した。利上げをやめるスタンスは今回からは特に感じられないという。

日本銀行本店

ブルームバーグのエコノミスト調査(9-15日)では、7割超が今月の利上げを予想した。正副総裁が先週、相次いで今会合で是非を議論して判断すると明言。支店長会議の報告などで昨年に続く良好な賃上げに自信を深める中、20日のトランプ政権始動後も市場で大きな混乱は見られず、1月利上げが市場に織り込まれていた。

新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した見通しでは、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)について、25年度を前年比2.4%上昇、26年度を2.0%上昇に上方修正。エネルギーも除くコアコアCPIも25年度を2.1%上昇に引き上げた。物価見通しのリスクは24年度と25年度は上振れリスクの方が大きいとしている。

エコノミスト調査では、日銀が政策金利を今年もう1回、来年は1回、それぞれ0.25ポイント引き上げると見込まれている。追加利上げが行われた場合、公定歩合が政策金利だった新日銀法施行前の1995年以来の水準となる。

 

(植田総裁会見を受けた市場の動きなどを追加して更新しました)

--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香.

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