(ブルームバーグ):米国の1セント硬貨(ペニー)の製造が終了した。トランプ大統領が今年早くに製造停止を命じたのを受け、米財務省は12日、フィラデルフィア造幣局で最後の製造を実施した。
ビーチ財務官は同局での式典で、「本日、銅製の1セント硬貨の製造に別れを告げるが、依然として法定通貨であることを明確にしておきたい」と発言。「流通しているペニーは3000億枚を超えており、引き続き使用してほしい」と呼びかけた。
同氏はさらに「われわれはペニーをなくすわけではない。製造を停止するだけで、法定通貨としての地位は変わらない。店頭や小売店で引き続き使用できる」と強調した。
一方で、小売業者の間では、1セント硬貨の製造停止により店頭で混乱が生じるとの懸念が広がっている。一部店舗では、硬貨不足に対応するため現金支払額を端数処理し、金額を切り上げまたは切り下げる措置を始めたという。
小売業リーダーズ協会のオーステン・ジェンセン氏は、「全米の数千の店舗が既にペニーを調達できておらず、硬貨不足に伴う複雑な問題に対応を迫られている」と指摘。小売業界は政府からの指針と議会による法整備を必要としていると声明で訴えた。
小売業界は州や地方の規制、食料補助制度の運用などで禁じられている価格の端数切り上げを認めるよう、議会に求めている。
ビーチ財務官によると、1セント硬貨の製造コストが近年上昇する一方で、需要は減少している。製造停止で年間5600万ドル(約87億円)のコスト削減につながるという。
同氏はまた、米国が硬貨の製造を停止するのは1857年にハーフセント硬貨を廃止して以来、168年ぶりだと述べ、今回の歴史的意義を強調した。
造幣局幹部によれば、12日に製造された記念の最後の1セント硬貨はオークションにかけられ、その収益は米造幣局の公共事業基金に繰り入れた後、年末に財務省の一般会計に戻される予定。
原題:US Strikes Last Penny After Trump Orders Discontinuation of Coin(抜粋)
--取材協力:Steven T. Dennis、Erik Wasson.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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