(ブルームバーグ):日本銀行の政策金利引き上げを契機に、日本株市場で過去1年近く劣勢を強いられた不動産株。投資家の間では、利上げパス(経路)や国内金利の最終到達点が今後はっきりと見えてくれば、良好なファンダメンタルズや投資指標から見た割安感が再評価され、一気に株価は反発するとの期待感が出ている。
オフィス仲介業者の三鬼商事によると、東京都心5区のオフィス空室率は昨年12月に4%まで低下し、約4年ぶりの低水準となった。平均賃料も11月まで10カ月連続で上昇するなど需給は良好だ。オフィスに加え、住宅の不動産価格指数も上昇している。
不動産市場は好調な半面、株式市場では国内の金融政策転換が有利子負債の多い不動産株の重しになってきた。日銀が17年ぶりの利上げに踏み切った2024年3月19日以降、市場全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)がほぼ横ばいとなっているのに対し、不動産業指数は10%安だ。金利上昇が収益にプラスに働く銀行業指数は21%高。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「今回の利上げの後は、金利上昇が持続的に大きくスピード感を持ってついていくというよりも、 少し小康的な状態になるだろう」と予測。金利が上がらないことで国内経済へのポジティブな影響が見込まれ、不動産株に「見直しが起こる可能性がある」と指摘した。
投資指標の割安感も不動産株の追い風になるかもしれない。TOPIX不動産業指数の株価純資産倍率(PBR)は1.19倍と、過去10年の平均1.33倍を下回っている。業績見通しも明るく、12カ月先の1株当たり利益(EPS)は直近で最低だった24年4月から12%増加した。
ロベコ香港のポートフォリオマネジャー、ケルビン・レオン氏は日本の不動産セクターをオーバーウエートにしている。主要都市のオフィス空室率が低下するなどファンダメンタルズは良好と判断しているが、「バリュエーションは逆の方向に向かっている」と言う。
ブルームバーグ・インテリジェンスの調査では、企業のオフィス拡張の動きから東京のオフィス賃料は25年に上昇が加速する可能性が高い。アナリストのパトリック・ウォン氏は、JR東京駅周辺で新しいオフィスビルを開発中の三井不動産や三菱地所などに有利に働くとの見方を示している。
とはいえ、さらなる金利上昇は投資家のセンチメント悪化につながる可能性があるとピクテ・アセット・マネジメントのシニア・インベストメント・マネジャー、シャニエル・ラムジー氏は警戒する。一方、日銀の追加利上げ後も日本の金利は海外の水準より低く、ファンダメンタルズの見通しは良好だとも指摘した。
実質金利がマイナスであるほか、産業用やオフィス用不動産に高い需要がある点を踏まえると、「日本の不動産セクターには長期的なストーリーがある」とラムジー氏は話している。
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