【金融政策:インドネシアとフィリピンが追加利下げ実施へ】
東南アジア5カ国の金融政策は、インフレが加速した2022年に利上げ局面が始まったが、昨年インフレが落ち着きを取り戻すなかで、各国中銀は徐々に利上げ局面を終了させた。そして今年後半に米国の利下げ観測が高まったタイミングでは東南アジア通貨が上昇するなど金利引下げ余地が生まれたため、いくつかの国では金融緩和に踏み切っている。フィリピンは米国に先行する形で8月から3会合連続の計0.75%の利下げを実施した。またインドネシアは9月に、タイは景気低迷により10月にそれぞれ0.25%の利下げを実施した。
先行きはフィリピンとインドネシアが金融緩和を続けると予想する。先行きのインフレ懸念が強くないため、金融緩和の時期やペースは為替動向に左右される。足元では米国の利下げ観測が後退して東南アジア通貨は再び下落傾向にあり、積極的に利下げを続けられる状況ではなくなってきている。しかし、フィリピンとインドネシアはこれまでの金融引き締めが積極的だったため金利の引下げ余地がある。両国とも国内経済は過熱感がなく、今後の物価上昇は緩やかなものと予想されるため、両国中銀は堅調な成長モメンタムの形成・維持に向けて、来年末にかけてインドネシアは計0.75%、フィリピンは計1%の利下げを実施すると予想する。一方、マレーシアとタイ、ベトナムは金利の引き下げ余地が大きくないことや堅調な輸出より景気見通しが比較的良好であることから金融政策を据え置くと予想する。なお、米トランプ政権の通商措置により成長とインフレ見通しが下振れる展開となれば、東南アジア各国中銀は金融緩和に前向きになるだろう。
