みずほフィナンシャルグループ(FG)は「マス法人」と呼ばれる顧客層の厚い中小零細企業や、スタートアップ向け業務で攻勢をかける。来期(2027年3月期)から、取引決済などで使い勝手の良い法人口座の取り扱いや、新たな与信モデルによる融資を始める方針だ。

木原正裕社長がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。口座は最短で申し込みの翌営業日に開設可能とし、振込手数料は業界最低水準に設定する方向で検討している。融資では人工知能(AI)を活用した最新の与信モデルを採用する。木原氏はマス法人について「ニーズは、安くて早い決済手段と多様な資金調達手段だ」と述べた。

中小企業などの生産性向上は国家的課題だ。銀行には法人全体の9割以上を占める中小零細企業をいかに支援し成長に導くかが問われている。スタートアップ向けも同様だ。「金利のある世界」では預金獲得の面でもこれらの企業への対応が重要となる。すでに参入している三井住友FGやりそなホールディングスといった大手行同士の競争も激しくなりそうだ。

みずほFGは25年9月、法人カードが柱のUPSIDER(アップサイダー)ホールディングスを買収した。同社はAIによる独自の与信モデルが強みで、法人向けAI与信では国内最大級だ。10万社超がサービスを利用しており、累計決済額は1兆円を超えた。

みずほFGの木原社長(2025年7月)

傘下のみずほ銀行はアップサイダーのAI与信モデルを活用し、オンラインでの申し込みから融資実行まで完結するサービスを提供する予定だ。木原氏は「マス法人は本当にマネタイズ(収益化)できるのかとずっと考えてきたが、アップサイダーと共にやることで、戦える可能性はあると思い始めた」と期待を込めた。

みずほ銀などは23年からベンチャーデットと呼ばれるスタートアップ向けファンドをアップサイダーと共に運営してきた。審査はAIを活用してキャッシュフローを予測しながら迅速に行う。与信モデルの活用実績も積み上がった。旧来の銀行審査とは発想とアプローチが全く異なり、1件当たりの金額が少なく非効率で、赤字も珍しくない創業直後の企業向け融資にも道を開いた。

M&A柱に欧米やアジア強化

みずほFGは26年以降、強みとするグローバル企業向けや投資銀行ビジネスの強化にも力を入れる方針だ。企業の合併・買収(M&A)助言業務を柱に、欧米やアジアといった地域をまたぐ案件の獲得を加速する考えだ。木原氏は「地域間連携が次の成長の分野だ」と強調した。

海外の投資銀行ビジネスでは、鍵となる企業を子会社化して地域間連携の地力を底上げする戦略を取っている。23年には米投資銀行のグリーンヒルを買収し、25年は英M&A助言のオーガスタとインドの投資銀行アベンダス・キャピタルの買収も発表した。

オーガスタは欧州で需要が強い再生可能エネルギー分野に特化している。アベンダスはインド経済を支えている地場の起業家ネットワークに深く食い込んでいる。

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