【物価:インフレ率は緩やかな上昇へ】
東南アジア5カ国の消費者物価上昇率(以下、インフレ率)は落ち着いた動きとなっている。2022年は世界的なインフレの波が東南アジアにも到来したが、昨年はエネルギー価格の下落や各国中銀の金融引締め等によりインフレの鈍化傾向が続いた。そして今年前半は天候要因を背景とした食料インフレや通貨安を受けて上昇傾向がみられたものの、インフレは概ね安定して推移した。
先行きのインフレは上昇に転じるが、緩やかな伸びにとどまる展開を予想する。労働市場の改善や賃金上昇など各国の雇用所得環境は改善しており、需要側の要因から徐々にインフレ率が上向くものとみられる。また足元では来年の米国の利下げ観測が後退しており、東南アジア各国の通貨には下落圧力がかかりやすく、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力がかかる可能性がある。もっとも、これまでの利上げの累積効果が続くほか、来年は外需の下押しにより成長ペースが抑制されるなかで物価上昇が緩やかな伸びにとどまるだろう。
