日本経済の縮図
成長産業と言えば、全体を牽引しているように思えるが、デジタル化の裏側では縮小する分野もある。第三次産業活動指数のカテゴリーでは、「情報通信」の中でデジタル系は伸びているが、紙系は低迷している。新聞・出版・週刊誌・月刊誌・書籍は厳しい。非デジタルが中心の分野には、映画・ビデオ・テレビ・ラジオもある。これらは、デジタルの隆盛で市場を食われている分野だ。広告需要も、非デジタルからデジタルにシフトして明暗が分かれている。
実は、上記のランキングには含めなかったが、製造業も厳しい。鉱工業生産指数は、同じ分類で、2018 年から2024年7-9月まで比較可能である。鉱工業生産全体は、この約6年間で▲11.5%ほど指数が低下している。全体の指数を2015年以降で遡及しても、最近との比較で▲8.7%となっている。
細かい分類ごとに、2018年から約6年間の上昇ランキングを作ってみると、
1 位 集積回路(IC)
2 位 事務用機器
3 位 航空機部品
4 位 分析機器・試験機
5 位 玩具
となっている。やはり、半導体関連は強い(1.6倍)。5位の玩具とは、ゲーム機なのだろう。しかし、製造業を調べて驚くのは、約6年間でプラスになっている分類が僅かに14しかないことだ。つまり、ほとんどの分類は市場が2018年比で縮小している。これは、製造業の全般的な衰退を意味する。このことに危機感を感じずにはいられない。政治の世界はこの事実をどれだけ真剣に捉えているだろうか。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 熊野 英生)