スマートデバイスへの順応
生まれた時からスマホやタブレットが存在するα世代。2歳前後で十分にタッチパネルによる操作性の仕組みを理解しており、筆者の知人の子供も自分で動画サブスクリプションサービスからお気に入りのアンパンマンのエピソードを探して視聴している。自身に与えられるエンターテインメントの多くが、スマホやタブレットに映し出されるコンテンツだからこそ、日々自分の気になるモノ(画面の箇所)に触れることが、自身の意思決定となっている。
今や日常でのスマホやタブレットの活用に留まらず、ショッピングモールの館内マップや、レストランでの注文もタッチする事がデフォルトになりつつあるが、このように「触れる事」が当たり前な環境に身を置いていると珍事が起きたりする。ある芸能人の子供の話だ。車を運転している最中ふとルームミラーを見ると、子どもが、親指と人差し指を開いたり閉じたりしており、理由を聞くと「遠くにある看板が良く見えないから」と返答したという。その子はタブレットとの接触を通じて、見にくくとも指を広げれば拡大(ズーム)できると思い込んでいたというのだ。知人の幼稚園教諭に話を聞くと、それに類似した行動が散見されるらしく、例えば絵本などを見ていて無意識にズームしようとし、タブレットではないことに気が付いてハッとした顔をしているのだという。
タッチパネルの話で言えばSNSで、子どもに3か月間で3度も液晶テレビを壊されたという投稿を目にした。その投稿に対して家電量販店員が、今の子供は幼少期の頃からタブレットを触っているため、画面がある物は全部タッチできると思っており、それで反応がないと画面を強く押してしまうという意見を投稿していた。その子どもがその様な理由で壊したかは別として、スマートデバイスに順応していればしているだけ、スマートデバイス基準で行動に移しても仕方がないのかもと、思った次第だ。
さいごに
前述したスマートデバイスへの順応の話は一般的な話ではないかもしれないが、IT技術がより身近なモノになったことの現れとも言えるだろう。また、マインクラフトはメタバースの成功例の1つであるが、メタバースやVR技術がスマートデバイスのように今後より身近になっていくからこそ、その技術に順応した世代とそうでない世代で行動に差が生まれていくだろう。
これだけ見てもα世代はずいぶん違うと感じたと思う。今後はα世代についてウオッチしながら、その行動について考察や分析を深めていきたい。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員 廣瀬 涼)