景気サポート要因 vs 関税引き上げの影響

2025年の世界経済について、①米国の減税・規制 緩和(成長促進策)に加え、②FRB、欧州中央銀行(ECB)の利下げ、③AIなど技術革新の継続や企業投資の増加などがサポート要因となろうが、②は特に重要だろう。米欧のインフレ率はやや下げ渋っているが、米欧の政策金利の水準はなお高く、中立水準に戻すための利下げは継続できるとみる。
これに対し、米国の関税引き上げが世界経済にストレ スを与えるという構図になろう。

図① 米関税引き上げのGDPに対する影響(世界、除く米国)

図② 米関税引き上げの消費者物価に対する影響(米国)

図①、②は、経済協力開発機構(OECD)の国際産業連関表を用い、米国の関税引き上げに伴う対米輸出減少が世界GDPに与える影響と、米国の消費者物価を押し上げる効果を試算したものだが、地域・品目を絞った場合は比較的緩やかな影響だが、全輸入品に一律10%の関税を追加した場合は相応に影響がある可能性を示唆している。

トランプ次期大統領がどのような関税引き上げ戦略を採用するか(影響が緩やかに止まるか、大きくなるか)が注目されるが、世界経済を大幅に悪化させることは、米国経済にとってもリスクが大きいことは明らかだろう。

また、今回の選挙でトランプ次期大統領はインフレ抑制を強調しており、インフレを大きく上振れさせる事態は避けるとみられる。これらを考えると、トランプ次期大統領は対中などの関税引き上げを優先しつつ、一般関税引き上げは相手国との交渉の余地を残して調整していくとみられる。この場合、米国の関税引き上げに伴う悪影響は、景気サポート要因によって吸収可能とみられ、世界経済は成長持続の可能性が高いと考えられる。