3つのタイプの政策のミックス
大統領選と同時に行われた米議会選挙において、共和党が上下両院とも過半数を制したことから、トランプ次期大統領は、予算措置を必要とするものも含めて政策を実行できる可能性が広がったと考えられる。
トランプ次期大統領が主張してきた政策を大まかに分類すると、①減税、規制緩和、②関税引き上げや移民制限、③エネルギーの増産を含む環境関連の政策やウクライナ情勢・中東紛争の早期終結など、に整理できる。
経済・金融への影響を考えると、①は成長を促進する 可能性が高く、金融市場の観点からは株高・金利高・ ドル高要因となろう。②の影響については議論があるが、 米国のインフレ率をやや高める一方、他国の成長率にはマイナスの影響を与える公算が大きいとみられる。
株価には抑制的に働く一方、金利と為替について はインフレと景気のバランス次第で変わってくるとみられる。 ③については関連するセクターへの直接的な影響に加えて、商品市況、特に原油などエネルギー価格やそれを通じた物価へのインパクトが重要となってくるだろう。
各種の政策を同時並行的に実行
第1期トランプ政権時を振り返ると、政権発足直後の1年半程度は減税や規制緩和など経済や株式市場にとってプラスの政策を先行して実施した後、対中関税の 引き上げに舵を切った。
2期目はトランプ氏にとって米大統領として最後の任期になる可能性が高い(したがって時間が限られる)ことや、同氏の共和党内での立場が強くなり、党内穏健派と協調する必要性が低下したことなどから各種政策を前倒しで実行するとみられる。
実際、当選後に発表した閣僚人事ではトランプ次期大統領と考えが近いとされる人材を指名している。さらに トランプ次期大統領は11月25日、対中関税を10% 引き上げ、カナダ・メキシコからの輸入に25%の関税を導入する方針を表明した。
1期目と異なり、政権発足直後から、減税だけでなく、関税引き上げや移民制限、外交・環境政策などについて同時並行的に実行する姿勢を明確にしつつあると言えよう。
「トランプ2.0」の1年目となる2025年は、市場は各種政策が景気やインフレ、金融政策に与える影響を見極めながら変動する年になろう。