(2)在留資格の現状
外国人の就労が認められる在留資格には、①育成就労(旧技能実習制度)、②16 分野における労働者である特定技能、③大学・大学院卒の最終学歴を持った技術者や専門職である高度外国人材、④留学生などのアルバイトによる資格外活動、といった区分がある。
上記の①~③については国として確立した制度であり、一定の監視体制が構築されている。また、政府は、高度人材と留学生を積極的に受け入れてきた。しかし、高度人材や留学生の受け入れは国際的な獲得競争が激しく、現時点ではアメリカの 1 人勝ちであり、ヨーロッパ、日本は優秀な人材の受け入れに苦戦している。そのため④については、日本語習得ができていない人材等が増えているとの指摘があるほか、政府としても十分に把握ができていないという課題がある。専門学校等で授業を受けるためには日本語検定 N1・N2以上の日本語力が必要であるが、日本語学校卒業生の半分以上が N1・N2に合格しないまま専門学校等に進学しているとの指摘もある。
なお、難民については、2023 年の入管法改正前には、難民認定申請を繰り返すことで退去を回避する外国人などが存在した。また、収容施設での収容の長期化、難民などを確実に保護する制度が不十分などの問題もあった。2023 年の改正では、難民認定手続中は一律に送還が停止される現行入管法の規定(送還停止効)を改め、3回目以降の難民認定申請者、3年以上の実刑に処された者、テロリスト等については、難民認定手続中であっても退去させることが可能になった。ただし、3回目以降の難民認定申請者でも、難民や補完的保護対象者と認定すべき「相当の理由がある資料」を提出すれば、いわば例外中の例外として、送還は停止することとした。こうした法改正は、海外では当然の対応であり、先進国全体として難民受け入れを厳格化する方向にある。
(3)社会的統合政策の現状
外国人政策は、入国管理と社会的統合政策(多文化共生政策)の 2 つに分けられる。まず国境管理においては入ってくる外国人数をコントロールしていくことが重要であるが、一度外国人労働者として受け入れたのちは、社会統合を進めていく必要がある。
政府は 2018 年に、「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策」を策定したほか、2022 年には日本の目指すべき共生社会の姿と中長期的課題を示した「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を策定しているが、これらが作成されたのはつい最近の話であり、具体策についてはまだ改善の余地がある状況である。また、欧米のように現地に溶け込めない移民二世・三世問題も指摘されている。
(4)日本の課題
以上の状況を踏まえると、日本の課題として次の3点が指摘できる。第一は、出入国在留管理庁があるものの、その他の官庁にも関連する業務が存在しており、その横ぐしが通っていないほか、立法的な手当も不十分であることである。第二は、欧米では、自国に適合性・動機が高い人材に限定して受け入れようとしているが、わが国ではそうした対応が遅れており、なし崩し的に低・中技能労働者が増えていることも指摘できる。第三は、既に日本に滞在している外国人の統合政策の歴史が浅いため、実務的にはまだ改善の余地が大きいことである。まだわが国が受け入れている外国人数が少ないため、問題は深刻化していないものの、このままでは欧米と同じような社会的な混乱が起きる可能性は否定できない。その観点からは、まだ時間的な余裕がある現段階から、次章で示している改革を行う必要がある。