「次は私が力に」家庭内性被害者を支える団体を設立

――裁判を通じて、家庭内性虐待をなくしたいと訴えてこられました。社会にできることは何でしょうか。

里帆さん: 社会の皆さんが当事者意識をもって、被害者を助ける必要があると思います。本来であれば家族が助けるべきところを、私の場合は第三者である佳樹さんが助けてくれました。

家族を訴えるということは、一人で戦わないといけない。精神的にとてもきついです。話を聞くだけでもいい。友人が「あなたは悪くない、相手がおかしい」と言って、心のヘドロを受け止めてくれました。三角チョコパイを食べながら話を聞いてくれる、それだけでも救われます。

――家庭内での性被害は、被害者にどのような影響を与えるものなのでしょうか。

里帆さん: 世界中の全員が信用できなくなるような犯罪です。親は、世界中で一番自分を愛し、存在を認めてくれるはずなのに、それを悪用して虐げる。何のために生まれてきたんだろうと考えさせられます。父が性的な道具として扱うために私を産んだんじゃないかと、そこまで思うこともありました。

誰もが自分を利用する世界なんだと、毎日考えていました。優しくしてくれる人がいると、裏があるんじゃないかと疑ってしまう。世界の捉え方が歪んでしまうんです。

――そうした被害者を支援するため、新しい活動を始められたそうですね。

里帆さん: はい。今回、「一般財団法人 Second Birthday」を設立しました。この判決を勝ち取ることができたので、次は私が、同じように苦しむ人たちの力になれないかと思ったんです。

家庭内性被害に苦しむ子どもたちが刑事告訴に立ち上がれるように、裁判期間中の生活支援をしていきたいと考えています。

――「Second Birthday」という名前に込めた思いを教えてください。

里帆さん: 「生まれ変わる」という意味で、夫と一緒につけました。裁判を終えて、一つの区切りとしてリスタートを切りたい。SNSを見ていると、刑事告訴に踏み切りたいけれど、何をしたらいいかわからないという人がたくさんいて、歯がゆい気持ちになります。そういう人たちの力になりたい。

新しくリスタートを切って、少しでも人生が明るくなれば。そして、加害者を許さないという社会の姿勢が、犯罪の抑止にも繋がると思います。性犯罪をゼロにしたい。「親ガチャ」なんて言葉を使ってほしくない。子どもたちが、部活動や勉強に悩むことはあっても、家庭のことで悩まずに明るく過ごせるように、微力ながら力になりたいです。

――最後に、今まさに苦しんでいる被害者の方へメッセージをお願いします。

里帆さん: 非常にいま、つらい思いをしていると思います。でも、社会は見てくれるので、声を上げて、信頼できる大人に「助けて」と相談してほしいです。勇気がいることですが、助けてくれる大人は必ずいます。

そして、刑事告訴に踏み切りたい、何か行動を起こしたいと思っている人は、司法の場で公平に裁いてくれるので、大変だと思いますが、行動してほしいです。