おわら風の盆と“ならわし”

富山県の中央部に位置する八尾町。

小高い丘の上に残る古い町並み。坂の町八尾に響く“胡弓の音色”が秋の訪れを告げます。民謡「おわら」です。

9月1日から三日三晩、八尾の人々は歌い、踊りあかします。地方とよばれる唄・囃子・三味線・胡弓・太鼓が織りなす調べと、踊り手たちの優美な踊りは、ひとつの芸術とも評されます。

引退の”ならわし” 現実とのはざまで葛藤する踊り手たち 

おわらの踊り手は25歳を区切りに引退しなければいけないという暗黙のルールがあります。この“ならわし”は、かつて踊り手の数が多かった時代、浴衣を人数分用意できないことから生まれたものですが、子どもが少なく担い手不足の今、このしきたりは時代に合っていないとの意見もあります。

実際には人手不足から、年齢制限を引き上げている町もあり、「ならわし」と「現実」のはざまで揺れ動いているのがおわらの現状です。

コロナによる祭り中止で西町では、引退の年齢について話し合った結果、1年延ばし26歳にすることにしました。

しかし、その場合、年頃の女性にとっては頭の痛い問題も浮かびあがります。女性の踊り手は未婚であることが求められます。1年引退を引き上げると、結婚も1年延びることを意味しますが、人生に関わる大きな問題。意見は割れました。

記者「人生に多大な影響を与えている?」
牧山「そうですね。25歳までは、おわらを少しは考えつつ、って感じになるかな」

しか し、この翌年2021年も新型コロナの感染拡大で「おわら風の盆」は中止に追い込まれました。