2016年1月15日未明、長野県軽井沢町で発生したスキーツアーバスの転落事故。大学生など15人が死亡したこの事故から、2026年1月で10年を迎える。事故の風化を防ぎ、交通安全の意識を次世代へ継承するため、遺族団体「1.15サクラソウの会」のメンバーが軽井沢高校で講演を10月に行った。失われた命への思い、再発防止への取り組み、そして若者たちへのメッセージとは。【後編】
「格安バス」という言葉が悪い意味で広まった事故
最初に登壇したのは、田原義則さん。次男の寛(かん)さん(当時19歳)を事故で失った父親だ。「バス事故から学ぶ─交通安全を考える」と題された講演で、田原さんは事故当時の新聞記事を示しながら語り始めた。

「『格安バス』という言葉が、ある意味悪い意味で使われ始めたのは、この軽井沢のバス事故がきっかけになったと思っています。私も正直、格安バスという言葉を、この事故に遭うまでは、安くていいじゃんみたいな、いい意味でしか考えていませんでした」
新聞記事には「またまた」という見出しも見える。田原さんによれば、2016年の軽井沢事故以前にも、毎年のようにバス事故が発生していた。2012年には関越道で7名が亡くなる事故があり、国土交通省は格安バスの事故をなくすための対策を進めていた。それにもかかわらず、3年半後に軽井沢で悲惨な事故が起きてしまった。

「亡くなった乗客は、みんな大学生でしたので皆さんと年齢が近いです。そんな年齢の近い皆さんが、毎年1月15日前後で交通安全を考える授業をされていると聞いて、すごくありがたかったです」












