「お前、兄貴分に借金しとろ」それでも組長はメモを見せてくれず
「毎月供養やっとる理由が分かったわ、おまえ兄貴分に借金しとろ。帳面が出てきたわ」
被告の男は2022年9月~10月ごろ、組長からこう告げられたと言う。しかし、組長は肝心の「メモ」そのもの自体は見せてくれなかった。
兄貴分に借金をしたことは過去何百回とあったが、ほとんど返済していた認識だった被告の男は、「何かの間違いであってほしい」と思った。しかし、尊敬する組長に「メモを見せるよう」指図などできなかった。
それと同時に、この頃からメモを見せようとしない組長に対し、不信感や怒りを募らせるようになった。
被告の男 自宅から出刃包丁を持参し組長の家へ
メモをこの目で確かめたい――。被告の男はそう願い、いつものように「組長の家に行かせてほしい」と電話。兄貴分のお供え物に加えて、この日は出刃包丁もカバンに入れ自宅を出た。
事件前日の2023年4月9日、被告の男はバイアグラを飲み、翌日10日にはカフェイン入りの清涼飲料水を飲んで、組長の家を訪れた。しかし、外に出てきた組長の手にメモは無かった。
被告の男は、組長に敷地内のベンチに案内され話していたが、その後も一向にメモの話は出ない。被告の男はだんだん頭が痛くなり、帰ることを決意。「帰ります」と伝えると組長は勝手口に向かって歩き出した。被告の男も後ろをついて勝手口に向かう。
「痛い!」
組長の叫び声で、被告の男は、右手で血の付いた出刃包丁を握っていることに気がついた。組長は、後頸部やや左寄りを1回突き刺され、刺創は最深部は約10cmに達していたという。
のちに裁判で「この時の記憶は全くない」と語った被告の男は、苦しむ組長を横目にそのままタクシーで警察署に向かい自首した。組長は幸いにも全治2週間程度の傷害にとどまった。
また「記憶がない」理由は、被告の男は前日に飲んだバイアグラと当日に飲んだカフェイン入りの清涼飲料水の作用しか考えられないと主張した。










