「避難率5%」の意味

今回のアンケートに回答した人の年代についてです。3分の2を占めるのが「60代以上」です。「50代以上」まで広げると全体の4分の3以上を占めます。今回、災害の危険性が高まった地域は、広島市北部から芸北地域で、都市部ではなく郊外から中山間地域だったのもありますが、中高年が大多数を占める形です。


では、去年8月の大雨の際、災害のおそれが高まった地域では、事前にどれだけの人が避難行動を取ったのでしょうか。今回の調査で、県が「避難率」として定義したのが、市町が開設する避難所"以外"への避難も含めた避難率(=実質的避難率)という数字です。

結果をみると、「洪水の浸水想定区域」(=以下、洪水と表記)では、避難率がおよそ20%、「土砂災害警戒区域」(=以下、土砂災害と表記)」では、避難率は5.7%となっています。


また、避難してない人に「避難をしなかった理由」を聞いたところ、洪水、土砂災害ともに半数以上の人が「避難しないといけないほど危険とは思わなかった」ことを挙げました。「屋外の状況から避難する方が危険と思った」「感染症(新型コロナウイルスなど)が不安」という回答も、洪水・土砂災害のいずれでも2割前後ありました。


土砂災害では「垂直避難で十分だと思った」という回答も20%を超えています。避難に関する国のガイドラインでは、土砂災害の場合、家屋の2階などに「垂直避難」をしても危険とされています。そのため、避難は危険な場所から移動する「立ち退き避難」を原則としているため、土砂災害の避難率に「垂直避難」の人は含まれていません。


―静岡大学 牛山素行 教授
「昨年、大雨があったわりには人的避難が少なかったのは、積極的な避難が行われた結果という意見も聞いたことがある。でも、今回の調査結果をみると、そうでないことが改めて認識させられる。」
「決して多くの人が積極的に避難行動を取ったわけではない。被害が少なかったのはあくまで結果論で、ギリギリのところで雨の降り方がおさまったから。」

まさに「紙一重」だった去年の大雨 西日本豪雨との違いは

去年の豪雨では、総雨量だけを見れば4年前の西日本豪雨を超える地点も少なくありませんでした。一方で、去年の被害の規模は全体でみると西日本豪雨に比べてかなり小さくなっています。では、2つの災害の被害の大きさを分けた要因はどこにあるのでしょうか。その大きな理由の一つが雨の降り方の違い、特に「短時間に非常に激しい雨が後半に降ったか」という点です。

西日本豪雨では、最後に2つの非常に激しい雨のピークがありましたが、去年の大雨ではありませんでした。


―静岡大学 牛山素行 教授
「去年の大雨は、西日本豪雨と比べると桁違いに被害が少なかった。危険だと思わなかったという人の認識も結果論的にはあながち的外れではない。呼びかけはあったけれど、そんなに大したことなかったよねと。ただ、それは結果としてそうだっただけで、災害の危険度が高まっていたから様々な避難情報が出ていた。」
「去年はそんなに大きな被害は出なかったので空振り気味の情報だったかもしれないが、もうちょっとだけ降り方が違っていれば、結果は大きく変わった可能性はある。『空振りを恐れるな』というが、精神論的なことだけふりかざすと、だんだんと情報の信頼性が損なわれていく。去年のケースで言えば、被害は大きくなかったが、もうちょっと違えば紙一重だったというデータや事実を示しつつ、今回は意味のない空振りではなくてギリギリだったことを提示していくことも重要。」