「13歳の妹を亡くし 自分だけ生き残った」父(95)の体験を受け継ぐ

高校の国語の教員だった細川さん。家族伝承者の研修を受けたのは、95歳になる父・浩史さんの体験を受け継ぎたいという思いからでした。

証言活動をする父 浩史さん(2013年映像)
「逃れていく人はみんな、血まみれですからね。血の手のあとがたくさんついていたのを覚えています」

浩史さんは17歳のとき、爆心地から1.3キロの広島逓信局で被爆しました。13歳だった妹は建物疎開の作業中に被爆して亡くなりました。

形見となった妹の制服を原爆資料館に寄贈し、積極的に証言活動をしていた父の姿を、洋さんはずっと見てきました。

父の被爆体験を語る 家族伝承者 細川洋 さん
「数十年、一緒に過ごした家族でないと知り得ないこと、父の性格やくせ、しゃべっている空白に込めた思いも感じることができる。これは家族伝承者ならではなのかと思う」

研修期間は1年から2年で、家族から聞き取った体験を原稿に仕上げます。ただし、亡くなった被爆者の証言を受け継ぐことはできず、伝承できるのはあくまでも存命の被爆者に実際に話を聞ける場合のみ。途中で被爆者が亡くなった場合は、研修が打ち切られることもあります。

父の被爆体験を語る 家族伝承者 細川洋 さん
「もしかしたらわたしも父が亡くなっていたら、この場でこうして委嘱書を受け取ることができなかったかもしれない。研修を終えることができなかったかもしれない」