「昭和20年8月6日‼ あゝこの日こそ私にとっては、永久に忘れることの出来ない痛ましい悲惨な想い出のつきぬ日である」
嘆きから始まるこの文章は、2人の娘を奪われた母親の手記です。記されていたのは、娘を失った悲しみと、平和を願う祈りでした。
今年のノーベル平和賞に、核兵器の廃絶を訴え続ける「日本被団協」が選ばれました。その授賞式は10日、ノルウェー・オスロで開かれます。1945年8月6日、人類史上初めて人の頭の上に落とされた原子爆弾。きのこ雲の下で何が起きていたのか。核兵器の使用が現実的な危機として存在するなかで、改めて被爆者の“声”を届けます。
「原爆の記」と題した手記は、葭本(よしもと)しげ子さんが、書き残したものです。しげ子さんには、3人の子どもがいました。長男の孝彦さん、長女の恒子さん、次女の純子さん。夫は病気で他界したため、女手一つで3人の子どもを育てていました。