那覇市首里に、県内で最も古い映画館があります。戦後間もない頃に建てられた70年以上の歴史を持つ首里劇場です。今月16日から解体工事が始まり、その姿を見られるのはあとわずか。時代にあわせ、変遷を繰り返してきたため、年代によって印象が異なる首里劇場とはどのような劇場だったのでしょうか。
かつては芝居小屋 舞台裏は役者の宿泊所だった首里劇場

再建中の首里城近く、閑静な住宅街の一角に、ひっそりと時が止まったような空間があります。まもなく解体工事がはじまる首里劇場です。
建物の中に一歩足を踏み入れると、昭和の名優のポスターがずらり。ノスタルジックな雰囲気が印象的ですが、首里劇場の魅力はそれだけではありません。
劇場の調査を続けている平良竜次さんに、歴史を教えてもらいました。
首里劇場調査団 平良竜次さん
「1950年に建物として完成しました。それから73年たったんですが屋内はほぼ変わりません」

木造瓦葺きの首里劇場。場内は観客が1000人は入るほどの広さで、二階席も設けられています。設立当初は、映画館 兼 芝居小屋だったそうです。
首里劇場調査団 平良竜次さん
「芝居小屋としての一番の特徴としては、舞台が広いところです。そして舞台の上手と下手の方に花道があります。花道をどう活かすかが役者の腕の見せどころだったそうです」

舞台裏は役者たちの宿泊所として使われていて、自炊をするためのかまども設置されています。
首里劇場の舞台に何度も立った沖縄芝居の役者、八木政男さんと平良進さんは70年以上前、はじめて訪れたときのことを鮮明に覚えています。
役者 八木政男さん(92)
「素晴らしい建物。首里の王族の御殿のようだった。役者はみんな舞台の上に立ってから、客席をしばらく眺めていた。みんな舞台に出てきて楽屋にはあまりいなかった」
当時は、劇場に屋根があるだけでも珍しい時代でした。
役者 八木政男さん(92)
「なんといっても花道が2つあるのに感激した。2つの花道があったら、役者は遠くに向けて声を出す演技ができた。これがまた、たまらんわけさ、役者にとっては」
役者の平良進さんは、劇場が間もなく解体されることを、寂しく感じています。

役者 平良進さん(88)
「ここは憧れの劇場でした。我々をちゃんと役者として育ててくれた劇場。ここに来ると本当に、もう心が広々として、芝居ができたもんですから。劇場が壊されるのは棺桶をおくるような感じがして、どうしてもたまらない。そのぐらい寂しい」