普天間基地の辺野古移設反対などを訴えるため訪米した玉城知事。就任3度目となる訪米は、これまでとは違った国際情勢のなかでのものでした。
アメリカから見る『沖縄』は?現地の声やシンクタンクの担当者の話から沖縄の価値が私たちに何をもたらすのかを考えます。

玉城知事「米国においては、防衛力の境界上に、平和的な外交対話による緊張緩和と信頼醸成の取り組みを進め、有事を起こさせない努力をするべきだと」

沖縄の現状を直接伝えるため訪米した玉城知事。基地負担軽減を求めたほか、何度も訴えたのが抑止力よりも対話、「平和外交」についてです。

舞台は、アメリカの政治・経済・外交の方針が決まる首都・ワシントンDC。玉城知事訪米のおよそ2か月まえ、この場所では日米の外務・防衛の閣僚会議2+2が開かれました。そこでは日米がさらに連携を深めていくことなどが確認されたほかアメリカ側は沖縄に駐留する海兵隊の改編を表明。

その背景にあるのは中国の存在です。

ブリンケン米国務長官「日米と同盟国・友好国にとって中国は最大の戦略的挑戦であるとの認識で一致した」
林外相「国際秩序を作り変えようとする、中国の外交政策は日米同盟および国際社会にとっての深刻な懸念であるという認識を共有しました」

海洋進出を強める中国を念頭に日米両政府は南西地域の防衛力強化を進めています。県内では対中国を意識した日米の共同訓練が増加。新たな自衛隊の配備が進み、沖縄は日米の軍事拠点と化しています。

一方、アメリカ国内での『沖縄』への関心はー

Q沖縄に米軍基地があるのを知っている?
アメリカ国民「知りません。中国を含めた外交関係を細かくは知りませんが、沖縄にある基地の必要性はそこに住む人々の思いをくむ必要があり、その思いに賛同したいと思います」
アメリカ国民「沖縄の基地に対して様々な意見があるのなら日本政府が自国のこととして対応するべきです。世界情勢が厳しさを増す中で、米軍が滞在することは良いことかもしれませんが、自分たちの国のことなのだから自分たちが望むようにすれば良い」
元軍人「近年の中国や北朝鮮の動きを見ると沖縄にある基地はこれまで以上に重要な存在になっていて、これからもその価値は高まり続ける」
Qそれは沖縄の求める基地負担軽減の声よりも優先されるべき?
元軍人「ええ、優先されるべきだと思います」

ワシントンを中心にアメリカ政治を取材するTBSワシントン支局の樫元照幸支局長はアメリカの中で沖縄の思いは埋もれていると話します。

TBSワシントン支局 樫元支局長「ワシントンでは今沖縄に対する関心はそれほど高くないというか、あまり高くないのが現実です。一方で東アジアの安全保障環境というのに対する関心は物凄く高まっている。それは中国が原因なんですけど。その中で、沖縄の声というのが埋もれがちというのが現状ですね」

また、連邦議会議員らと面談を重ねた今回の訪米について一定の成果が期待できると指摘します。

樫元支局長「議員に会っているがアメリカは大統領が強いイメージがあるが議会もすごく力を持っていて、議員に対して沖縄の実状を伝えるというのは一つ意義があることだと思う」

政権に対し外交や安全保障に関する政策提言などを行うシンクタンク、戦略国際問題研究所=CSISのニコラス・セーチェーニ日本副部長。今回、玉城知事との面談にも同席したセーチェーニ日本副部長は、沖縄の基地負担軽減の必要性に理解を示す一方、その戦略的な「価値」をこう強調します。

CSIS ニコラス・セーチェー二日本副部長「沖縄の米軍基地がもたらす影響を軽減することは非常に重要です。しかし、日本を取り巻く安全保障環境は複雑になっていることを認識することも必要です。日米を脅かす可能性のある複雑な安全保障上の課題について、日米両国が考えなければならないのです。沖縄はその地理的条件から、戦略的にさらに重要性を増しています」

そのうえで、知事の訪米の意義についてはー

セーチェー二日本副部長「当事者の意見を聞く機会はとても重要だと思います。玉城知事が会う全ての人が、知事と同じ意見であるというわけではありません。しかし、玉城知事がワシントンで行う交流は日米関係の相互理解に繋がるものだと思います」

辺野古移設反対をかかげるも手詰まりな状況が続く中、ますます高まる沖縄の戦略的価値。

玉城知事「沖縄を2度と戦場にしてはいけないと思っている。米国日本においては抑止力防衛力の強化以上に平和的な外交や対話による緊張緩和、信頼醸成の取り組みを進め有事を起こさないための取り組みを強化していくべきである」

大国に定められた『沖縄』の価値を前に当事者として有事を起こさせないための戦略が求められています。