■ “血中濃度が低ければ影響がない”と言えるのか?

次世代の身体で何が起きているのか──

治療法の研究に取り組む全国油症治療研究班は「母親のダイオキシン濃度と流産・死産には相関関係がみられる」としています。

その一方で母親のダイオキシンは“胎盤”、“赤ちゃんを覆っている胎脂”、“母乳”などに かなりの量が排出されるため『大部分は 子供の体内に移行していない』としています。

全国油症治療研究班 辻 学 班長:
「油症のお子さんは、実際には血中のダイオキシン類の濃度が低いです。
“油症の患者から生まれた”という『事実』はあると思うが、今は“線引き” が難しい状況です」

血中ダイオキシン類濃度──
一度、体内に入ったダイオキシンは一生かけても排出されない』ことから、油症かどうか認定する基準になっています。

次世代の濃度は“一般人とほぼ変わらない”とされていますが、“濃度が低いから影響はない”と言えるのでしょうか?

■ 差別を恐れ “次世代”であることを隠す人も

高知市に住む中内 孝一さんは、母親が汚染油を食べた3年後、上唇と上あごが裂けた状態で生まれました。死産の恐れもあったという出産。
油症の被害は次世代にも及んでいると訴えています。

油症認定患者 中内 郁子さん(82):
「思うどころじゃない…油症が“重大な原因”です。(出産当時は)私も皮膚症状が出て、顔がお化けの様になっていました。全身が」

油症次世代(子・未認定) 中内 孝一さん(51):
「紙一重で命を取り留めたことが何回もありました。その度に生き残ったという感じ。(次世代調査は)何を今更と思ったんですけど、やるだけやるかということです」

認定を求めて、16年前から検診を受け続けています。

2人の弟は油症次世代であることを隠していて、今回の調査にも参加していません。

記者:(弟さんたちは特に症状はないんですか?)
油症次世代 中内孝一さん(51):
「影響はあるんですけども…すべてカットしています(公にしていません)。もうこれ以上は…。うん。自分と母だけが残って(次世代被害を訴えています)」