■ 発覚から54年…次世代を救済する道筋は示されるのか

世代を超えて受け継がれるかもしれない恐怖と差別。
多くの人が口を閉ざす中、次世代の調査は、ほぼ手付かずの状態できてしまいました。

諫早市に住む下田 恵さん(33)。母 順子さんが汚染油を食べました。
顔と名前を公表し『次世代調査の必要性』を訴えてきた一人です。

次世代(子・未認定)下田 恵さん(33):
「自分に移行してるかもしれないという“不安と恐怖”は皆さん持ってると思うんです。次世代調査には皆さんが参加してくれているので、データをちゃんと残した上で生かしていってほしい」

油症認定患者 下田 順子さん(61):
「次世代は次世代で救って欲しい。見てきてますので。自分の子どもも、他の被害者の子どもも…」

全国油症治療研究班 辻 学 班長:
「(次世代に)何かしらの健康被害はあるのではないかという予想を立てていて、それをはっきりさせていくのが第一段階。(油症患者は)お子さんのことをすごく心配されている。そういう所はすごく大切だなと日々思いますので」

被害者と認められない中で、“油症への差別と恐怖”は背負わなければならない次世代。
研究班は来年6月、『次世代の調査結果』を公表する方針で、救済する道筋が示されるか注目されます。

(関連記事:「恨む 恨む お母さんが油を食べていなければ」絶望と恐怖…子や孫に申し訳ない 差別を恐れ口つぐむ被害者

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
【カネミ油症事件】
1968年(昭和43年)カネミ倉庫(本社 福岡県北九州市)が製造する食用油に『PCB・ダイオキシン類が製造過程で混入』した事が発覚。西日本一帯で多くの人に深刻な健康被害を引き起こした。

ダイオキシン類の半減期は人の寿命を越え、被害者の体内には未だ高濃度に残存している事がわかっている(全国油症治療研究班)。
『胎児には胎盤等でブロックされほとんど移行していない』とされているが、その一部は移行し、“死産や流産”を引き起こしたほか、“色素沈着の見られる赤ちゃん”が生まれた。

“黒い赤ちゃん”の誕生は世間に衝撃を与え、仕事や結婚への影響を恐れ、多くの人が被害を隠したまま今に至る。

しかし発覚から半世紀が過ぎた今、次世代からも健康被害を訴える声が上がっており、国は2021年(令和3年)に次世代健康影響調査に着手した。

“受精卵時からのダイオキシン曝露”を調べた研究は世界でもなく、今回が初めての調査となる。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

カネミ油症事件から55年 次世代健康調査 公表を前に

第2回:「恨む お母さんが油を食べていなければ」先生からも石を投げられ…差別恐れ 口つぐむ被害者
第3回:「PCBがなかったら人生は狂っていなかった」次世代に続く油症被害者の救済で 企業責任の行方は

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽