言語学者の加藤和夫さんが「気になる日本語」を取り上げるこのコーナー。今回は 「させていただきます」症候群です。

自分の行為を謙譲表現的に言う場合、「~させていただきます」という言い方自体に 、日本語として何か問題があるわけではありません。ただ、気になるのは、仕事を頼まれたときに「私がやります」、人の荷物を持ってあげるときに「お持ちします」と言えばいいような場面で、「私がやらせていただきます 」や「持たせていただきます」のような言い方を聞くことです。

このように、「~させていただきます」を使うと必要以上にへりくだりすぎだと感じること、みなさんにもあるのではないでしょうか?

「させていただく」 という表現は、 使役の助動詞「させる」の連用形に接続助詞の「て」と、物の授受を意味する、やりもらい動詞の「いただく」 が結びついた形です。

「させていただく」を分解

拡大する“本来の使い方”を超えた用法

使役の助動詞とやりもらい動詞が使われていることで、基本的には相手に許可をもらって行動し、それが自分にとって恩恵にあたると認識されることを表すものです。ですから、そのような本来の使い方で使うのであれば問題ないのですが、 近年は「させていただく症候群」という言い方がされるほど 、「~させていただく」という言い方の、本来の使い方を超えた使用が拡大しているのです。

基本的な意味は…