京都大学と高知大学の共同研究グループが日本初記録となるテッポウエビ類の一種を北海道で採取し、7月、和名を提唱しました。
「アナジャコ」の巣穴を調べていたところ、偶然発見されたということです。
日本で初めて確認されたのはテッポウエビ類の「カクレテッポウエビモドキ」です。
採取したのは京都大学と高知大学の共同研究グループで、2017年と2018年に北海道の厚岸湾と有珠湾でアナジャコの巣穴を調査していたところ、見慣れないテッポウエビ類が合計で4個体発見されたということです。

▼京都大学フィールド科学教育研究センター邉見由美助教
「穴の中の生き物を吸い出した際、不思議な色のエビがいるなぁと思っていました」

見つけた時は「日本初記録のエビ」とはわからなかった邉見助教ですが、その後行った頭の甲羅の形や遺伝子の調査の結果から、これまでロシア・ウラジオストク付近の日本海でしか確認されていなかった珍しいテッポウエビ、「Betaeus levifrons」であることが明らかになりました。
▼京都大学フィールド科学教育研究センター邉見由美助教
「『Betaeus levifrons』は以前から論文を読んで知っていましたが、こんな子が日本の北海道から出たんだなと驚きました」
日本に分布するテッポウエビモドキ属の2種は石の下などに単独で生息する「自由生活種」であるのに対して、今回見つかった「Betaeus levifrons」は巣穴にかくれている生態をもとに今年7月、「カクレ」を追加した「カクレテッポウエビモドキ」の和名を提唱。
今回の発見により、海洋生物の生態の多様化や共生関係の進化の研究で多くの知見が得られることが期待できるといいます。
邉見先生のもとには早速、アメリカの研究者から「カクレテッポウエビモドキ」の遺伝子を使ってテッポウエビ類の研究をしたいと連絡が来ているということです。
▼京都大学フィールド科学教育研究センター邉見由美助教
「『アナジャコ』は体長5センチほどの生き物ですが、巣穴は1メートルを超えることもあります。その中にはまだまだ知られてない生き物がいるという面白さがあります」
皆さんも周囲の自然をじっくり観察してみると人知れずひっそりと暮らしている生き物たちに出会えるかもしれません。