西原被告の母親が語った言葉

母親は、事件当時に西原被告が両親と3人で暮らしていたこと、元来、人と話すことが苦手でコミュニケーションがうまくいかないことが多かったこと、仲の良い友人はいなかったことなど、西原被告の人間関係を問う弁護士に答えた。

性格について聞かれると、注意をした際に急に興奮することがあり、特に女性のかん高い声や怒った声に反応することが多く、自身も尻を「けつられた(=けられた)」ことがあったと証言。10年ほど前には、西原被告から受けた暴力が原因で病院を受診したことがあったと振り返る。

被害者への弁償について問われる。少し落ち着きを取り戻していた西原被告の母親のおえつが、再び高まる。用意した弁償金は300万円という。「はした金かもしれないが、遺族に対して精一杯かき集めた」と声を絞り出す。その上で「被害者の家族に申し訳ない、したことを一生償って欲しい」と西原被告への思いを述べた。

続いて検察官から、なぜこれまでの裁判の傍聴をしなかったのか問われると「申し訳なくて、見ていられなかった」と回答。夫は過去に傍聴をしていたものの、辛さに耐えられなくなり、裁判の途中で退席したことなどを挙げた。

西原被告は、3人の刑務官に取り囲まれて座り、うつむき気味の姿勢で、自身の母親の証言を聞いていた。

「中学のころから友人はいない」

自閉症傾向など、軽度の障害がある西原被告。14歳になると、障害者の自立支援などを行う福祉施設に入所した。共働きの両親は、1日中面倒を見ることができなかったと、その理由を説明する。

差し戻し前の審理内容を把握するため、過去の裁判で行われた被告人質問の録音が再生される。スピーカーから、証言する西原被告の声が流れ出す。

「小学生のころの記憶はない」
「中学生のころ、学校に友人はおらず、弟とは週に2、3回遊んでいた」

人と話すことが得意ではなく、また人に話したいと思うこともなかったと証言する西原被告。中学時代には、テレビゲームやサイクリングに興味を示したと話す。一方で、この頃、線路への置石などの問題行為もあったという。

その後の5年間にわたる障害者福祉施設での生活の中でも、話すことのできる友人はできなかったと振り返る。この施設からは、脱走して退所した。

社会人になってからは、職を転々としてきたと話す。「怒るとセーブが効かなくなる性格」が災いして、人間関係のトラブルが絶えなかった。友人ができることはなく、女性との交際経験もない。

審理は進み、事件に直接関連する質問が始まった。西原被告は、被害者の女性の首を絞めたきっかけについて問われると「覚えていない、大変申し訳ないことをしたと思っている」と答えた。