ドラレコのSDカード抜き取り「責任能力ある」
一方の検察側は、犯行現場に止められていたトラックのドライブレコーダーからSDカードを抜き取るなど、西原被告が証拠隠滅を図っていたことなどを挙げ、知的障害の程度は軽く、刑事責任能力はあると述べ、無期懲役を求刑した。
「強制わいせつ致死」退け懲役19年

2018年11月13日に行われた判決公判で、松山地裁の末弘陽一裁判長(当時)は、突発的な殺意による犯行とした上で「殺人罪」と「強制わいせつ罪」を認定。しかし「強制わいせつ致死」の成立については「合理的な疑いが残る」として退け、西原被告に懲役19年の判決を言い渡した。
11月27日までに、弁護側と検察側の双方が控訴。審理の場は高裁へと移った。
高裁が「裁判のやり直し」命じる
2019年12月24日、高松高裁は「明らかな事実誤認がある」として一審判決を破棄、審理の「やり直し」を松山地裁に命じた。差し戻しの理由の中で、高松高裁の杉山慎治裁判長は「殺人罪と強制わいせつ致死罪の成立を前提にするのが相当」と述べた。
差し戻しを命じる高裁判断を受け、西原被告の弁護側は最高裁に上告したが、棄却された。
4年越し、2度目の地裁での審理
2022年12月5日、再び松山地裁で始まった「やり直し」の裁判員裁判。最初の裁判から既に4年が経過していた。
争点を「わいせつ行為の有無」「最初に首を絞めた時点での性的目的の有無」に絞り込んで開かれた差し戻し審の初公判で、弁護側は「わいせつの意図はなかった」として起訴内容を一部否認した。

2023年3月3日。新型コロナの感染拡大などを受け、審理はさらにずれ込んでいた。この日の裁判では、朝から証人尋問が行われ、被害者参加制度により参加した被害者の母親や親族も被告人に対して意見陳述を行った。
松山地裁41号法廷には、証言者のプライバシーを保護する目的で、目隠しのパーティションやアコーディオンカーテンがすき間なく並べられていて、傍聴席の最前列に座った記者の目の前に、大きな壁のように立ちはだかる。そのすき間をぬうようにして、慌ただしく裁判所職員が動き回る。ほどなくして、静まりを取り戻した法廷内に、すすり泣いているのだろうか、パーティションに取り囲まれた証言台に立つ女性の存在に気付く。西原被告の母親だ。