「なぜ人を殺してはいけないと思う?」
「なぜ人を殺してはいけないと思う?」
裁判官の問い掛けに、長い沈黙を経て「法律で決まっているから」と西原被告。
「では、人が亡くなったらどうなると思う?」
再び沈黙ののち「分かりやすくお願いします」と回答。やり取りは続く。
「(被害者が)将来しようと思っていたことはどうなる?周りの人はどう思う?」
「出来なくなる、悲しい気持ちになると思う」
西原被告が持つ「自覚」や「罪の意識」を推し量るかのような質問が重ねられていく。
「家族が用意した弁償金の300万円についてどう思う?」
「申し訳ないと思う」
「見捨てずに出所を待つと話す母親をどう思う?」
「(沈黙)」
「被害者の母親が『もう娘と旅行できない』『写真を撮ることができない』と証言したことについてどう思う?」
「大変悪いことをしてしまった」
「被害者の母親が、被害者の写真を見ていると、楽しい思い出の写真なのに涙が出てくるというのはなぜだと思う?」
「(沈黙)」
「反省するというのはどういう意味だろう?」
「――難しい」
やり場のない悲痛な思い
午後、被害者参加制度により参加している被害者の母親が意見を述べた。
「(差し戻し前の裁判の)一審判決、懲役19年に絶望した。たったの19年なのかと、地獄に突き落とされた気分になった。強い怒りと不信感がつのった」
娘を奪われた悲しみに打ちひしがれた母親の悲痛な声が法廷に響く。西原被告に対する、そして裁判所の判断に対する、やり場のない思いがあふれ出した。
「娘の幸せが私の幸せだった。一緒に旅行に行き、一緒に写真を撮りたかった」
被害者の母親の意見陳述は、事件当日の詳細な状況に迫る。
「当日の朝、娘に『お仕事頑張ってね』とLINEをしたところ、仕事が嫌だという気持ちを表現するかのような、不機嫌そうな表情のウサギのスタンプが返ってきた」
「今となって思うと、仕事に嫌なことがあるという意思表示だったのだろう」
「西原被告には、これまでに何度も女性の首を絞めるなどトラブルがあった」
「免許停止の時期が間近に迫っていたトラック運転手の西原被告は、娘と2人きりになれるチャンスをうかがっていた」
深い悲しみの中にあってなお、淀みのない声で意見を読み上げていく。
「娘は酷い殺され方をした。今治署に安置されていた、最後の姿が目に焼き付いている」
意見は、裁判に臨む西原被告の態度にも向けられる。
「控訴審に一度も出廷しなかったのはなぜか。理由が分からない、本当に無責任だ」
「今年1月になって、初めて反省文を受け取った」
「事件からの5年間、裁判での『嘘』に苦しんだ。奈落の底にいると感じた」