青森県内の優れたものや取り組みに迫る「キラリ逸品」です。

今回は、東北新幹線新青森延伸と同時にオープンした施設で製造される「アオモリシードル」です。今や県内各地で製造されるシードルの先駆けとなった取り組みには、意外な困難がありました。


青森駅前のウォーターフロントエリアに立地する商業施設、A―FACTORY(エーファクトリー)です。市場を思わせる店内には、県内の物産や文化を発信する商品が並んでいて、特に人気なのがシードルです。



※来店客
「女子会とか、一人でも飲めそうだし、友だちと飲んでも良さそうだなって」「青森のリンゴを使っているところですかね。県内のものを使っているっていう。そういうところが良いところだと思います」

シードルは、リンゴの果汁を発酵させて造るヨーロッパ生まれの果実。A―FACTORYでは、「アオモリシードル」としてブランド化し、施設内の工房のほか、2020年からは弘前市吉野町(よしのちょう)にオープンした工房でも製造するようになりました。



現在、店頭に並ぶ7種類のうち「弘前吉野町17(じゅうなな)ミディアム」は、2022年11月に開催されたシードルの国際コンクールで、金賞を受賞。

今や「アオモリシードル」は、名実ともに青森を代表する商品となりました。ただ、「アオモリシードル」の開発に当初から携わってきた工藤直樹さんは、ここに至るまでの道のりは、決して順風満帆ではなかったと言います。

※A―FACTORY弘前吉野町工房 工藤直樹工房長
「最初は本当に、今となったら言えるんですけれども、そんなにおいしくなかったと思うんです。そこから試行錯誤を重ねていって、経験を積んでいって、段々おいしくなっていったと思います」

A―FACTORYがオープンしたのは、東北新幹線の新青森延伸にあわせた2010年12月4日。この施設で行う県産リンゴだけを使ったシードルの製造は、県内の物産や文化を広く発信する中心的役割として大きな期待が寄せられていました。

しかし、そこには大きな壁が存在していました。



※A―FACTORY弘前吉野町工房 工藤直樹工房長
「(当時は)日本全国的にもそんなにシードルっていうのは認知されていない感じでした。そこでシードルづくりを基礎から学んだという形になります」



実は、国内でシードルが初めて造られたのは1953年の弘前市で、その後、大手メーカーが事業を引き継ぎ製造していました。それでも青森県内の認知度はほとんどなく、工藤さんたちにとっては未知への挑戦だったと言います。


そして、もう一つ。最大の障害となったのが県産リンゴの「おいしさ」でした。