青森県内の優れたものや取り組みに迫るキラリ逸品。今回は、殻の付いたそばの実を石臼で挽いてそば粉にするまで、全ての工程を自前で行う弘前市のそば店です。この製法で仕上がるそばは風味がよく、香りも際立ち、そば本来の味が感じられるとして評判です。

石戸谷治彦(いしどや・はるひこ)さん、57歳。弘前市のそば店「彦庵(ひこあん)」の店主です。石戸谷さんの打つそばは、殻つきのそばの実、玄そばから石臼で挽いて粉にするまでの全ての工程を経て、風味豊かで香り高いと評判です。

※来店客は「週6で食べています」「おそばの食感が好きです。店の中で手打ちをやっているのが弘前だとここしかないらしくて。すごくおいしいです」

弘前市茂森新町にたたずむ「彦庵」。27年前、石戸谷さんが30歳の頃、独立開業しました。かつて石戸谷さんは約100年の歴史がある東京のそばの名店に入門し、海外展開先のニューヨークでも修行を重ねた末、この店の製法を引き継いだと言います。


※彦庵店主 石戸谷治彦さん
「修業に入ったところが、全国で初めて完全自家製粉をやった、パイオニアの店だったんだよね」
完全自家製粉はそば粉にするまでの全ての工程をこなすことで、そばの実の中心にある胚芽(はいが)も粉になるため、ミネラルや必須アミノ酸が豊富です。そして、石臼の粗挽きによって歯ざわりと風味がきわ立ちます。石戸谷さんがそば粉に仕上げるのは、その日に使う分だけ。「挽きたて」、「打ちたて」、「茹でたて」を貫いています。

※彦庵店主 石戸谷治彦さん
「もともとそばが好きで、味も好きで。栄養的にすごいんだよね。かなりバランスが良くて。(完全自家製粉は)手間はかかるけど、やりがいはあるよ」

このこだわりを引き立てるそばつゆは、かつおの本節、宗田節、さば節をブレンドし、約1か月熟成させます。こうしたすべてに手間ひまかけた「彦庵」のそばが、ほかとは一味違うと言わしめるゆえんを確かめました。
