1年のうち20日間ほど「海に浮かぶ修道院」に

潮の満ち引きと関わりの深い世界遺産は他にもあります。代表的なのが、フランスの世界遺産「モン・サン・ミシェルとその湾」。海に浮かぶ修道院として、もっとも人気のある世界遺産のひとつです。かつては潮が引くと歩いて渡れるようになり、巡礼者はそのタイミングで修道院と行き来していました。19世紀に堤防のような橋が作られ、いつでもモン・サン・ミシェルに行くことが出来るようになったのですが、これによって潮の流れが変わり、泥が堆積して修道院周辺が徐々に埋め立てられる事態になりました。放っておくと「海に浮かぶ修道院」ではなくなり、ただの陸地に建つ修道院になってしまう・・・そこで2014年に潮の流れを妨げない新たな橋が作られました。番組で撮影したのですが、橋脚で支えられた橋の下を潮が流れるように改良。さらに春と秋の大潮のときには、橋の一部が海面下に沈むように意図的に設計されました。これによって1年のうち20日間ほど、モン・サン・ミシェルは完全に陸と断絶し、「海に浮かぶ修道院」という本来の姿を見せるようになったのです。

ちなみにモン・サン・ミシェル近くで美味しいのが「プレ・サレの子羊」。「あらかじめ塩味になっている子羊」みたいな意味です。この辺りの牧草地も満ち潮になると海水に浸るため、塩味。その塩味の牧草をプレ・サレの子羊は食べるため、美味なのだと言われています。