1日2回水没…わざと水没するように設計した街づくり

ブラジルの世界遺産パラチーは大西洋に面した港町です。17世紀にポルトガル人が入植して築いた街並みはカラフルで、よく保存されています。当時のブラジルはゴールドラッシュ。パラチーはポルトガル行きの金の積み出し港として栄え、内陸の金鉱山からこの町まで「黄金の道」と呼ばれる運搬用のルートが作られました。

この街、なんと毎日水没します。番組「世界遺産」で撮影したのですが、毎日二回、潮が満ちてくると街路に浸水して、まるで水路のようになります。潮位の高い7、8月はボートで移動できるほど。実は、パラチーではわざと浸水するように計画的な街づくりが行われました。かつては人間や家畜の排泄物を街路に捨て、潮の満ち引きで海に流していたのです。下水道代わりに、潮の干満を利用したわけです。

そのパラチーの海の沖合に浮かぶのがグランデ島。こちらは木に登るヤマアラシなど珍獣の宝庫で、併せて「パラチーとグランデ島 文化と生物多様性」という自然と文化の両方の価値を持つ複合遺産になっています。パラチーの背後にそびえる山脈もグランデ島と同じく自然遺産で、「ブラジル大西洋岸森林地帯」と呼ばれる広大な森の一部です。この森林地帯は、山脈と海に挟まれて周囲と隔絶しているため独特の進化を遂げた生き物も多く、それが自然遺産に認められた理由です。