記憶にあるのは「現場にうずくまる自分を他者視点で見ている光景」


事件直後に自ら通報し、殺意も認め、動機面や犯行態様も語ったはずの山本被告。しかし、現在行われている裁判では一転、“記憶がない”と供述している。

(2月2日の被告人質問)
検察官「『会いたいよ』『好きだよ』というショートメッセージを送ったことは覚えていますか?」
被告 「覚えてないです」
検察官「今後の関係を話し合おうと思って、被害者宅に行ったのではない?」
被告 「それは違います」

裁判官「あなたは被害者の部屋に行った記憶もないんですか?」
被告 「はい」
裁判官「いまから振り返って、どうして部屋に行ったと思いますか?」
被告 「スーツを取りに行くためだと思います」

検察官「被害者がベランダから飛び降りたという印象も残っていない?」
被告 「そうですね」
検察官「あなたは被害者に馬乗りになって、胸を複数回刺したのではない?」
被告 「覚えてないです」
検察官「通報した際に『人を殺しました。捕まえてください』と言った記憶は?」
被告 「まったくないです」

弁護人からの質問では、山本被告は次のように語った。

(2月2日の被告人質問)
山本被告
「覚えているのは、事件現場にうずくまっている自分を上からか下からか、他者視点で見ているような光景です」
「“シーラカンスは生きた化石”ということを、頭の中でグルグルと考えていた記憶があります」


さらに “大田さんの体の一部に手に置いて触った” という記憶があるとも語った。

山本被告は真面目に答えていた。しかし、被害者の遺族や友人がその言葉を聞けば、どんな気持ちになるだろうか……と考えこまざるを得なかった。