「救急車を呼ぼうとして、ポケットから携帯電話を出した際に、振り返ったら被告が走ってきました」
「女性に乗りかかるようにして刺していました」

目撃者が法廷で語った緊迫の現場。大学生カップルの “痴情のもつれ” は、路上での惨殺という最悪の結末に至った。
2022年に大阪府堺市で起きた女子大学生殺害事件の裁判。被告の男は “覚えていない” という供述を繰り返した。

「いまは覚えてないのですが、僕のしたことは間違いないです」

廷内スケッチ(1月29日の初公判 以下同じ)


2024年1月29日、大阪地裁堺支部で開かれた初公判。入廷した被告は、スーツ姿に青いネクタイを締め、少し長い髪を後ろに結っていた。たたずまいからは “誠実な好青年”という印象を受ける。

山本巧次郎被告(24)は、2022年8月に堺市西区で、大学生の大田夏瑚さん(当時20)を包丁で刺殺した罪に問われている。

罪状認否で山本被告は、「いまは覚えてないのですが、僕のしたことは間違いないです」と述べ、起訴事実を認めたものの、“記憶はない”とした。

弁護人は「急性の精神障害の影響で、被告には当時、殺意も責任能力もなかった」として無罪を主張した。