「憲法改正解散」はあるのか

そこでささやかれるのが、「憲法改正を掲げた解散総選挙」である。

今回の政治とカネの問題を受けて、岸田総理が宏池会を突如解散すると決めたことで、事前に聞かされていなかった麻生副総裁、茂木幹事長は激しく反発し、3人の溝は深まったとされる。ある自民党幹部は「岸田・麻生・茂木の三頭政治は終わりだ」と指摘している。

岸田派の解散も加わって、政権基盤が弱まっている岸田総理としては、9月の自民党総裁選で再選されるためのハードルが極めて高くなったともいえる。

そこで総理サイドが考えているシナリオが、総裁選前に解散総選挙を打って出るというもの。仮に勝利できれば国民の信任を得たとして、総裁選で対抗馬が立ちにくい状況を作ることが出来るからだ。

岸田総理(1月30日、施政方針演説にて)
「本丸は、物価高を上回る所得の実現です。あらゆる手を尽くし、今年、物価高を上回る所得を実現していきます、実現しなければなりません。」

岸田政権は去年を上回る賃上げを強く呼びかけているほか、6月には所得税などの減税措置によって可処分所得が増えることから、国民の間に経済が上向いている実感や明るいムードが広まることを期待している。
そして6月は通常国会の会期末でもある。国会終盤のタイミングで解散総選挙に打って出る、その場合に解散の大義として憲法改正、賛成か反対か、というテーマ設定をする、こんな選択肢がささやかれているのだ。

ただ、与党内では、現状の支持率では夢物語に近いと冷ややかだ。解散権は総理が持つとはいえ、仮に党幹部や閣僚がこぞって反対したときに、全員を罷免してまで解散に踏み切れるのか、本気度を疑う声もある。

そしてなによりも、目の前の「政治とカネ」の問題がある。

立憲・泉健太 代表(1月30日)
「裏金問題を起こしてるときに、我が党の仲間たちからも聞こえてきた声は、汚れた手で憲法を触るなと。本当、その通りですよね」

裏金事件の真相解明と再発防止策としての政治資金規正法の改正。ここで納得の得られる結論を得られなければ、岸田総理の訴えも説得力を欠く。

究極の“博打”ともいえる「憲法改正解散」に打って出るのか。

岸田総理は「先のことは言わない。問題山積だし、引き続き正念場であることは変わらない。ひとつずつ直近の課題に取り組むしかない」と周囲に話している。

TBSテレビ 政治部
官邸キャップ
川西全