総理の”博打”は派閥解消?次の一手は?

「博打を打たなければ逆転はできない」

今年1月、大スキャンダルへと発展した自民党の派閥の政治資金の問題を受け、内閣支持率が最低を更新し続けていたころ、岸田総理は周辺に対してこう語っていた。

それからほどなくして、岸田総理は自身が会長を務めていた派閥、「宏池会(岸田派)」の解散を決める。誰よりも派閥愛が強いとされていた総理の決断は驚きをもって受け止められた。

これが「博打」だったのか。そうだったのかもしれないが、内閣支持率の回復にはつながっておらず、現時点では「逆転」の一手とはなっていない。ただ、政権浮揚に向けてまだまだ切るカードがある、岸田総理はそう匂わせている。
そして、そのヒントは今回の施政方針演説の中にあった。

憲法改正で“異例の言及”

1月30日の衆議院本会議。岸田総理による施政方針演説が行われた。

焦点だった政治改革については、自民党の政治刷新本部の中間とりまとめを超える打ち出しはなく、野党側からは「裏金、裏金、裏金」とヤジが飛ぶなど、前途多難な国会を予感させた。

そんな中、ひときわ議場から歓声が上がったのが、岸田総理が演説の終盤で憲法改正に言及したときだった。

岸田総理(1月30日・施政方針演説にて)
「あえて自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています」
「今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」

今年9月に自民党総裁としての任期を迎えるのを前に、憲法改正を実現したいと訴えたのだ。

自民党の重鎮議員は「あれにはビックリした」と率直に驚きを口にし、自民党の中堅議員は「今、憲法改正を求める国民がどれだけいるのか」と、戸惑いを隠さなかった。

施政方針演説は今年1年の内閣の基本方針や政策について訴えるもので、国会で決めるべき話である憲法改正について、総理大臣ではなく、わざわざ自民党総裁として踏み込むのは異例といえる。
実際、岸田総理は過去、施政方針演説、所信表明演説を通じて「自民党総裁として」という表現を使ったことはない。

では、なぜこんな表現が出てきたのか。

政権幹部
「事実上期限を切った。言わないと動かないから。現状、衆院と参院でピッチがあっていないので『考え方を一致させていきましょう』とハッパをかけたということ」

また、政府関係者は「改正の中身にまでは踏み込んでいない」と語り、総理大臣が発言しうるギリギリのラインをついたと解説した。