避難生活で食事が困難に 災害に備える“入れ歯データのバックアップ”とは
池田医師にはもう一つ気になっていることがあるという。東日本大震災では、震災で入れ歯をなくしてしまい、食事が困難になり、免疫や体力が低下してしまう高齢者も多かったという点だ。
池田昭理事長
「東日本大震災は昼食後の時間帯に発生した災害だったため、食後に入れ歯を外していた状態で、着の身着のまま避難をした人が多くいらしたそうです。そのため、5人に1人が入れ歯をなくしてしまったと言われています。
そして被災地に届けられる食事は、おにぎりやパンなどの炭水化物が多く、入れ歯がない高齢者にとって、そういった食べ物は、冷えてしまうと噛むことも、飲み込むことも困難になってしまい、低栄養状態になる人もいたといいます」

しっかり食べるには“歯”が必要だ。通常入れ歯を作るには型を取り、かみ合わせや歯並びのチェックなどで通院回数は4回以上、完成までに1か月程度はかかるという。東日本大震災では歯科医療チームが総動員で入れ歯の製作にあたったものの、地元の歯科医院も被災してカルテも残っておらず、提供までには数か月かかったそうだ。
池田医師は、入れ歯のデータをクラウド保存することが、今後の防災の鍵になると感じているという。池田医師自身も、無料で入れ歯のデジタルコピーとデータのクラウド保存を行っている。

池田昭理事長
「例えば、スマートフォンはバックアップをとっていると思うので、無くしたり、壊したりしても、新しいスマートフォンを購入すれば以前と変わらずに使うことができますよね。
入れ歯も同じように、もしものときの備えとして、データを預けておけば、全国各地の提携歯科医院の3Dプリンターを使って、最短翌日には同じ入れ歯を使うことができるように取り組んでいます」
過去の震災を振り返っても決して軽んじてはいけない口腔ケア。いま避難所でできることを確認するのと同時に、未来に起きるかもしれない災害に備えていくことも、大切になりそうだ。