アメリカにもオリンピックゆかりの世界遺産が…
さらにアメリカにもオリンピックゆかりの世界遺産があります。その名も「オリンピック国立公園」。なんでこんな名前の公園がアメリカにあるのかというと・・・公園内のもっとも高い山がオリンポス山、つまりギリシャ神話で神々が住むとされた山と同じに名付けられ、そこから転じて公園の名前もオリンピックになりました。オリンポス山と命名したのは、18世紀にこの地を探検したイギリス人だと言われます。ちなみに、本家のギリシャでは、オリンポス山と古代オリンピックが行われていたオリンピアはかなり離れています。
オリンピック国立公園は、太平洋に面した海岸と内陸の森と山岳地帯が世界遺産エリアで、海と森と山という三つの顔を持っています。海には長さ30メートルにもなる巨大なコンブが生息していて、これを食べる貝を求めてラッコの大群も暮らしています。森は世界的にも珍しい「温帯雨林」で、海上で発生する霧が雨を降らせ、苔むした木々を育んでいます。さらに山岳部にはアメリカ有数の広さの氷河地帯があり、特にオリンポス山には公園最大の氷河であるブルー・グレイシャーが残っています。
この氷河のエリアは自然保護区に指定されて厳重に保護されているため、なかなか撮影許可が下りませんでした。ところが昨年、ダメで元々で撮影申請をしたところ、なぜか許可が出て撮影出来ることになりました。
番組として初めてのエリアの撮影。自然保護区で車も使えず、全ての撮影機材や食料・テントをスタッフが背負って山登り。苔だらけで湿度が高い森を抜け、雪解け水で凍てつくような冷たい川を徒歩で渡り、ほとんど垂直の崖を重い荷物と共に上り下り・・・担当したのはベテランのディレクターとカメラマンだったのですが、「これまでで一番キツい撮影だった」と泣きが入るほど過酷なロケになりました。
自らの身体能力の限界に挑む・・・期せずしてオリンピックに出場するアスリート状態になったスタッフの苦闘ぶり、そしてブルー・グレイシャーにたどり着くことが出来たのかどうかは放送でごらんください。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太














