ニューイヤー駅伝 in ぐんま(第68回全日本実業団対抗駅伝競走大会。群馬県庁発着の7区間100km)にパリ五輪マラソン代表3枠目を狙う選手が多数出場する。10月のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)で優勝した小山直城(27、Honda)と、2位の赤﨑暁(25、九電工)が代表に決まったが、3枠目はMGCファイナルチャレンジ(男子は12月の福岡国際、2月の大阪、3月の東京の3大会)に持ち越された。2時間05分50秒のMGCファイナルチャレンジ設定記録を上回った選手の中で、記録の一番良い選手が3人目の代表に決定する。誰も設定記録をクリアできなかったときは、MGC3位の大迫傑(32、Nike)が代表入りする。

大迫は「ワクワクする区間」に出場

大迫の動向が注目されている。
4年前もMGCは3位で、“一発”で代表は決められなかった。6か月後の東京マラソンで2時間05分29秒と、当時の派遣設定記録の2時間05分49秒(大迫自身が18年シカゴで出した当時の日本記録)を突破。21年に延期された東京五輪代表入りを決め、本番では6位に入賞した。

同じパターンを踏襲するなら、今回も3月の東京出場が有力だが、大迫は出場を明言していない。20日にNikeで会見した際には次のように話した。

「ファイナルチャレンジについては発表前の段階なので、どのレースに出るとは言えませんが、若干思っていることもあります。自分の持っているプランなどを、自分のメディアなどもあるので、遠くない未来に発表したい」

五輪出場に関しては「世間の熱量と僕の熱量は差があるかな」とも発言。大迫自身は五輪出場にこだわっていない。ワールドマラソンメジャーズなども、世界に挑戦できる舞台と考えている。

ファイナルチャレンジに出場する可能性はあるが、絶対に3枠目を取る、という走り方ではなく、新しいことにチャレンジしたいという。つまり、世界トップレベルの選手への挑み方を、これまでのマラソンとは変える可能性がある。

4年前、予定通りに20年8月に東京五輪が行われていたら、結果を出せなかったかもしれない。大迫自身がそうコメントしたことがあった。ファイナルチャレンジで頑張りすぎたら、代表権を得ても本番で戦えない。
ファイナルチャレンジの位置づけが普通の選手とは違ってくるかもしれないが、大迫が3月頃のマラソンに向けてニューイヤー駅伝をステップに走る可能性は高い。

ニューイヤー駅伝には、優勝を目指すGMOインターネットグループに参画し、2年連続で出場する。前回は3区で区間2位。区間賞は太田智樹(26、トヨタ自動車)に譲ったが、区間2位の好走で11人抜き。チームを18位から7位に引き上げた。

27日に会見したGMOインターネットグループの亀鷹律良監督は、「(大迫は)ワクワクする区間を走ります」とコメント。最長区間の2区候補には前回4区(前回までの最長区間)区間6位の吉田祐也(26)、全日本実業団ハーフマラソン5位の今江勇人(25)ら、スタミナ型の強力選手がいる。前回同様3区への出場が有力だろう。

東京五輪代表だった服部が復調の手応え

東京五輪代表組では服部勇馬(30、トヨタ自動車)が復調してきた。今年、マラソンは2時間9分台と2時間10分台。高速化した今の時代では好記録とは言えず、MGC出場権も得られなかった。

だが、夏以降に良い練習ができ、11月の八王子ロングディスタンス10000mは28分35秒84。これも好記録ではないが、練習のプロセスは順調だという。「八王子の後、しっかり練習が積めて今、右肩上がりです。ニューイヤー駅伝前にここまで順調に練習ができているのは初めてですね」。

服部は19年と21年に5区で、前回は7区で区間賞を獲得してきた。今回のトヨタ自動車は2、3区に太田と田澤廉(23)の起用が有力視されている。ライバルチーム指導者からも、この2区間はトヨタ自動車がリードする、という声が出ている。
だがインターナショナル区間の4区は、そこまで強力ではない。4区で差を詰められたり逆転されたとき、5区以降に登場する服部の力が、トヨタ自動車の8年ぶり優勝のカギを握るのではないか。

「向かい風の中でもフォームが崩れないように、トレーニングの中で意識しています」

MGCファイナルチャレンジへの意欲も大きくなってきた。

「40km走や距離走をメインにしながらも、その中でスピード練習も両立できています。それなりに自信があります」。ニューイヤー駅伝の優勝をステップに、ファイナルチャレンジで連続五輪代表入りに挑戦する。

東京五輪組では中村匠吾(31、富士通)も、長期間の低迷から抜け出してきた。八王子ロングディスタンスで28分23秒00。好記録とはいえないが、中村にとっては18年以降の自己最高タイムである。選手層の厚い富士通で駅伝メンバーに入れるかどうか。微妙なところだが、上州路に姿を見せればファイナルチャレンジにつなげられる駅伝になるだろう。