世界陸上の40kmまで入賞圏内だった山下

今年8月の世界陸上ブダペストに出場した山下一貴(26、三菱重工)と其田健也(30、JR東日本)、昨年の世界陸上オレゴン代表だった西山雄介(29、トヨタ自動車)の3人も、パリ五輪代表3人目候補。山下と其田の2人は、3月の東京マラソンで2時間5分50秒台。自己記録を更新すれば派遣設定記録に手が届く。

山下のブダペストの走りは鮮烈だった。最終的には痙攣に見舞われて12位に後退したが、40km地点では3位と23秒差の5位を走っていた。
だが、6週間の間隔で挑戦したMGCは32位に終わった。

ニューイヤー駅伝に向けては、「疲れを抜くことを優先したトレーニングでしたが、11月下旬からは本格的に追い込めています」と黒木純監督は明かした。
入社して3年連続5区を走ってきた。1、2年目は連続区間4位、前回は大会前に故障があり区間9位。マラソンに取り組むことで大きく成長した今は、「過去3年間と比べ地力が付いています。練習が違う」と黒木監督。

2区は井上大仁(30)、3区は林田洋翔(22)が有力候補。前回までは最長区間が4区で今回は2区だが、過去2年間は3区の林田でトップに出ている。「(5区が有力の)山下で抜け出さないと勝ちが見えてこない」(黒木監督)
駅伝で成長した走りを見せ、ファイナルチャレンジで自己記録更新を実現する。

其田も世界陸上、MGCを短いインターバルで連戦したが、MGCは前半で途中棄権した。走り出して少しでも異常を感じたら、無理はしないプランだった。
その後は「上り調子」だと大島唯司監督。「駅伝だけでなく、ファイナルチャレンジに向けて気持ちがしっかりした状態で練習を進められている」。

其田は駅伝でも徐々に、安定感を増した走りができるようになった選手。前回こそ欠場したが21年は6区区間4位、22年は5区区間8位。「本人の得意区間もありますが、五輪代表を狙う選手に相応しい区間がある、と其田には話しています。チーム事情や戦術も考慮して決めて行きます」。向かい風の後半区間で強さを見せてきたが、チーム状況によっては前半区間への登場があるのかもしれない。

西山は世界陸上オレゴンで13位。世界トップ選手たちのペース変化に対応できず、その対応策を強化するためMGCまで1年以上、マラソンは走らなかった。万全に近い準備ができたにもかかわらず、MGCは46位(2時間17分49秒)と大敗。「メンタルがやられて、復帰に時間がかかった」という。

MGCのことは意識的に「振り返らない」ようにした。その方が「ニューイヤー駅伝とファイナルチャレンジに向かっていける」という判断だ。

幸い、身体的なダメージは小さかった。
「(五輪代表入りの)可能性はゼロじゃない。マラソンのことを考えながら、駅伝をビシッと走り、良い流れを作りたい」

トヨタ自動車は日本選手権10000m2位の太田と、4位の田澤で2区と3区を分担すると見られている。だが2人に日本選手権のダメージが見られれば、西山が代役候補だという。20年大会では3区で区間賞を取ったスピードがあり、過去2年は最長区間の4区を走ってきた。

西山の起用区間はトヨタ自動車のチーム状況を示す。そして駅伝で好走することが、西山が立ち直る一番の方法だ。