支えとなったのはラグビーで培った「不撓不屈」の精神力

 傷口が塞がってから始まったリハビリは、足の指先を動かすことから始まった。今年2月に内川はこんなことを日記に書いている。

 『自分の中でプロやトップレベルにいけなかったときの言い訳ができたと安堵している自分がいる。実力的にも厳しいのは本心で分かっている。だがそれにしても、コンパートメントを理由にするのは一番楽で格好もつくがそんなぬるい道でいいのか?不撓不屈とはどんな困難に直面しても決して挫けない様ではないのか?』

 不撓不屈とは、内川の出身校・佐賀工業高校ラグビー部が部訓としている言葉。どんな困難にも負けず、立ち向かうという意味がある。自問自答する日々。しかし、ラグビーで培った体力や筋力だけでなく精神力が、絶望の状況にいた内川を奮い立たせた。そして入院中も高校や大学の仲間がラグビーをしている姿は、内川に強烈な刺激となった。「もう一度グラウンドに立ちたい」そこから続いたのは地道なトレーニング。足の指を動かすところから、徐々に歩く練習へと移行。筋肉がつくとランニングができるようになり、今年の夏にはコンタクト練習ができるまでに復帰した。まさに驚異の回復力。そして11月5日にはBチーム戦で試合復帰。手術から14か月後。11月12日にはAチームの試合にリザーブとして名を連ねた。

 「僕は運が良く命があって、リハビリをしてラグビーできる体になりました。世の中にはもっと重いけがやスポーツが続けられない人もいます。大変な時期を経験して、少しでも誰かの希望の光になるように努力を続けたいと思うようになりました。復帰試合は、チームメイトや観客からたくさんの声援をもらって、色んな人の支えがあって自分があると実感しました」