台湾総統選まであと1か月。中国と距離を置く与党候補のリードが伝えられるなか、中国は野党の支持層が多い地方に優遇策を次々と打ち出しています。

来月13日に迫った台湾の総統選。最新の世論調査では、中国と距離を置く与党・民進党の頼清徳氏が35.1%、最大野党・国民党の侯友宜氏は32.5%、第三勢力の柯文哲氏は17.0%で、頼氏がわずかにリードしています。

そんななか、台湾が実効支配する金門島は。

金門島は対岸の中国福建省・厦門市とはおよそ2キロしか離れておらず、防衛の重要拠点になっています。観光地には、国民党と共産党を意味する「国共」と書かれたミルクティーの看板が。

記者
「国民党と共産党という意味でいいんですかね?」

店主
「中国からのお客さんが来られるようになってからは、中国人のお客さんを相手に商売をしてたから」

このネーミングについて店主は、“中国人観光客へのアピールだった”といいます。

金門島は防衛の最前線であると同時に、観光や貿易で中国とのつながりが深い所です。

ある島民の男性が見せてくれたのは、10月に中国側から受け取った「台湾居民居住証」です。中国で仕事や生活をする台湾の人が、中国人と同じような社会保障を受けられるうえ、ホテルの予約や不動産の購入などもしやすくなるといいます。

この男性は「ほぼ毎月、中国に旅行に行く」といいます。

また島民の20代の女性は、9月に中国で開催されたイベントに参加した際、居住証取得の条件(中国で仕事をしているか、居住している)を満たしていないものの、居住証を発行できたといいます。

女性は、「イベントの主催者が『ついでにどうですか?すごく便利だから』って。30分で手続きができました」と、手続きの容易さを強調しました。

さらに中国は総統選4か月前の9月、福建省に台湾統一に向けた「モデル地区」を建設する計画を発表。生活圏の一体化による「平和的統一」のイメージや、企業の誘致、就職など「経済的な便宜」をアピールしました。

同じ9月頃から台湾居民居住証の発行も盛んに行われるようになり、台湾政府の大陸委員会は「リスクを慎重に考え、中国共産党の統一工作の手に落ちないように」と注意喚起しています。

また、野党・国民党の別の地盤でも中国の動きが。今月に入って中国は、2年前から害虫を理由に禁輸としていた「釈迦頭」の輸入を再開しました。

釈迦頭の一大産地・台東県は、行政トップが国民党に所属。一方、与党・民進党がトップを務める隣の屏東県では、パイナップルなどの中国への輸入が禁止されたままです。

中国で台湾政策を担う「台湾事務弁公室」は、「台湾独立に反対し、中国の検査基準に従っている限り、農水産物の輸入再開を支持する」と説明しています。

総統選まであと1か月。選挙情勢によっては、中国が再びこうした揺さぶりをかけてくる可能性もあります。