髙橋:
(2024年の)パリ五輪に向けて戦っていくには、イタリアに挑戦しようって。
天文学の父、ガリレオ・ガリレイも暮らしていた、パドヴァ。
イタリア北部のこの街で、昨年12月、高橋藍は新たな挑戦を始めた。

髙橋:
自分自身がもっと海外と対戦して経験を積んでいれば、やっぱり「メダルにもう少し近づけたのかな」っていう自分なりの口惜しさがあったので、イタリアでプレーすることが自分にとってはすごくプラスになるんじゃないかと思って。

2021年12月9日、セリエAデビュー戦。
実況「ラン!タカハシ!」
最初のスパイクを決めてみせた。
ところが、その後は主に守備での貢献を求められ、やがて出場機会が減っていった。
ついにはチームの監督から、攻撃に参加出来ない守備専門のポジション、リベロでの起用を告げられる。その理由について、指揮官、ヤコポ・クッティーニ監督は。

チームのスパイカーと比べると髙橋にはフィジカルの強さと経験が足りない。リベロは彼のポジティブな性格にとても合っている。このポジションは彼のキャリアの中でもひとつの切り札になるのではないかと思っているよ。
リベロを務めるのは、中学生以来だった。

最初は「リベロでいってくれないか」と監督に言われた時は複雑な気持ちで。「スパイカー」として世界に学びに来ているので。でも少し気持ちを変えて、リベロってポジションっていうのは常に声を出してチームを鼓舞していくポジションなので、日本代表に帰ってこれから自分自身が日本代表の軸となっていく中で本当に必要になってくるスキルだと思っているので。

この経験は、必ず今後に活きてくる。そう考え、髙橋は前を向いた。
レシーブでチームに貢献し、声を出してチームを盛り上げる。
そのひたむきな姿に観客が心を奪われるまで、それほど時間は掛からなかった。